枢連荘の日常。
□3 作家密着24時
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『…え?密着取材、ですか!!?』
「あぁ…どうやらそのようだ…。」
ある晩、枢連荘の住人が集まって夕飯を食べていた時、ルートヴィッヒが暗い顔して打ち明けた。
「え〜ルートすごいじゃん!さすがシンシンキエイの作家だね!」
「え、ということは枢連荘に取材陣がいらっしゃるということで…?」
「え〜お兄さんテレビに出ちゃうの!?」 「お前じゃねぇだろ髭!!」
「おめー、すっかり有名人あるな!」
暗いルートヴィッヒとは対照的に沸き立つ住人達。きゃあきゃあと盛り上がっている。
「いや、勝手に話を大きくするな。テレビじゃない。文芸誌だそうだ。取材陣も一人二人くらいなものだろう。そこまで大規模なものじゃないぞ。」
盛り上がりすぎた空気を落ち着かせるようにルートヴィッヒは場を制す。
てっきりテレビがうちに来るのかと誤解した住人たちは少し照れくさそうに笑った。
「でも密着取材なんてすごいじゃないか!いつ、いつ来るんだい!?」
「あー、一週間後だと聞いた。…都合の悪いものはいないだろうか。」
…都合が悪いものは誰もいないようだ。都合が悪いどころかみんなわくわくしている。
「わー、取材なんてすごいなー。ドキドキしちゃうよね。だってずーっと見られちゃうんだよ?しかも世間の人にまで知られるんだもんね。うふふ、緊張しちゃうね!」
「そ、その言い方はやめてくれないか…」
「フランシスさん、ルートヴィッヒさんのためにお赤飯を炊きましょうよ。」
「お、良いね!菊も手伝ってね〜」
「そこまでしなくともいいぞ!」
ルートヴィッヒは困ったような照れくさいような顔でみんなをなだめようと試みる。あまり効果はないらしいが。
##NAME2##は御多分に漏れずわくわくしている。取材ってどんな感じなんだろう。ルートヴィッヒさん流石だな。どんな感じで雑誌に載るんだろう。そんな気持ちだった。
「…嫌だと言ったんだがな。勝手に決められていたんだ。うちにも上がりたいそうだから、まぁ、各自覚えておいてくれ。…ごちそうさま。」
「えールートもう戻っちゃうのー?」
「仕事があるからな。」
そう言って、ルートヴィッヒは一番早くに夕飯を食べ終え、自室に戻ってしまった。
作家というのはなかなか大変な仕事のようだ。締め切り前には缶詰めになっていることがたまにある。それが密着取材とは…。仕事の幅も多いようだ。