ヘタリア長編 その目で見つめて
□2 日伊同盟
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お土産屋から出ると外は薄暗く、そろそろ戻らなくてはいけない時間だった。
「もうこんな時間ですか…。あっという間でしたね。」
「今日は俺たのしかったよー!ささ、乗って乗って!」
促されるままイタリアの車に乗った一行は、今日の出来事について語らいながらヴェネツィアを後にした。
「そういえば日本と椿ちゃんはいつまでヨーロッパにいるの?もしかして、もう帰っちゃう?」
「いえ、私たちはあと1週間ほどこちらに滞在します。今週、また世界会議がありますのでヨーロッパで過ごしたほうがいいかと思いまして…。
椿さんもできるだけ長く滞在したいとのことで、とても楽しみにされてたんですよ。」
「あと1週間か。そうか…。」
1週間は椿と一緒にいられるという喜びと、1週間で帰ってしまうという悲しみが同時にわき、なんとも複雑な思いだった。
『あの、ドイツさん…。いいですか?』
「なんだ椿?」
『お嫌でしたら断っていただいて結構なのですが…、この1週間のうちに一度、ドイツ観光もしてみたいのですが、よろしいでしょうか?』
「「「!!!!」」」
(な…、なんてことだ、俺の家の観光だと!?大歓迎だ!!!)「Natürlich will ich!!」
(ド、ドイツ慌てすぎ…!)
(ドイツさんが母国語を…!萌えです!)
突然のお誘いに、ドイツは舞い上がった。顔が自然とにやけ、それを隠すために険しい顔をしていたが、顔は紅潮し、隠しきれていなかった。
『な、なりひ…???何て?』
「あ、今のは大丈夫だよ〜ってことだよね?」
「そうだ…。すまない、つい出てしまったようだ。」
『そうですか、ありがとうございます!やはりいろいろな国へ行ってみたいものでして…。』
「だったらさ、世界会議にも来てみない?日本の手伝い役としてなら出席できるんじゃないかな!それに、いろんな国が参加するから仲良くなれるかもよ?」
『え!?』
イタリアからの提案に椿は顔を上げた。
噂に聞くあの世界会議。本当はものっすごく興味があったが行くことが叶わなかった世界会議。…亡国である自分には縁のない世界会議…。
『し、しかし私は亡国ですし、部外者が出ていいようなものではないですよ!』
「いや、俺の兄さんも時々、『暇だから』と言って会議についてくるぞ?出席するくらいならばいいと思うが…。」
『お兄様…プロイセンさんのことですね、存じ上げております。って、そうではなく…』
「まあ、ドイツさんもおっしゃっていますので出席してみては?私は椿さんに世界会議の様子を見て頂きたいのです。」
日本がそう説得すると椿はう、という表情をして、『……お言葉に甘えて…。』と付け加えた。
そんな表情をする椿をかわいい、とドイツは思った。
今日初めて会った相手にここまで惚れこむとは、俺は本当にどうかしてしまったのか…と胸中では自身を疑っていたが、椿を見ると本当にどうでもよくなるから不思議だった。