攻殻機動隊

□さるべきにや
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平穏な生活を送っている人間からしてみれば、警察や軍人の仕事なんてものは映画や非現実的な世界に思えるだろう。

しかし一歩足を踏み入れてみれば、その世界もまたホームになるということが起こりうるのだ。

所謂、人生の分岐点
その選択肢によっては。

ここでは人が体験し得る非現実の最たるもの、国の秘密機関の話をしよう。

化学や技術が進み、人間の身体や脳までもが機械化している時代の、とある特殊部隊の話だ。








少数精鋭部隊公安9課は、日々起こりうる犯罪をどこよりも早く嗅ぎつけ、抑制する。

今日もまたその一課を担う課長、荒巻からの集合要請があった為主力メンバーである7人がオフィスに集まっていた。

「とある地域一角の住人が、無差別で電脳をハックされるテロが起こった。被害人数こそ少ないがネットでは次の可能性が示唆されている。」

そう淡々と説明しながら、荒巻の背後にあるモニターにはインターネット上に、件の被害者による書き込みがつらつらと並んだ。

「電脳をハックされた者によると、最中の記憶は無いにも関わらず、とある地名だけはハッキリと覚えているらしいのだ。恐らくだが犯行予告と捉えていいだろう。」

「あら、どうしてそう思うの?」

数々の可能性が考えられる現場で珍しくそう言い切る荒巻に、9課の紅一点である少佐こと草薙素子は腕を組みながらそう返した。

「そりゃあ、これだけお粗末なテロだからだろう。無差別なわりに計画性は感じねぇし、内容も酷いもんだぜ。」

苦笑いをしながら苦言を飛ばすバトーは、普段から冗談めいた軽口こそ叩くが今回は本心からであった。

「まぁな、脳をハッキングされた奴らがしたことが[俺はキリストだ!と叫び持ち物を振り回す]…だもんな。」

ダレそうな空気を更に濃いものにしないかと心配しながらも、トグサは荒巻の顔にチラと目線を送りながら頭を掻いた。

「うむ…まぁ気持ちは分からんでもないがたまたま怪我人が出なかっただけだ。料理の最中に包丁を持っていた者が被害に遭えば、惨事になるだろう。まずお前達にはその地名とハッキング経路を洗ってもらいたい。」

普段から大きな仕事ばかりが舞い込んでくるわけではない。

こういった面倒そうな仕事も請け負ってこその公務員なのだ。

荒巻の一声にそんな考えが各々の胸中に響いたことだろう、皆少佐の指示に従いながらある者は情報収集、ある者は被害者への事情聴取等それぞれできる仕事を進めた。
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