コイル

□数え亞素眉
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「服を脱げ、人虎」
「はぁ?!?!いきなりなんだよ!芥川!」
「太宰さんより預かった命を実行するためだ。これ以上の文句は受け付けん」
「太宰さん?」
夜もとっぷりと暮れ、芥川の家にお邪魔している僕はいきなり訳の分からないことを言われた。
というか羅生門って白Tだと白くなるんだな。あといつもより小さいな。
「そうだ。人虎の黒子を数えろとなぜか言われた。しかしあの太宰さんのこと、何か考えが「ない!!絶対にない!遊んでるだろ!!」」
あのヘラヘラとした笑顔に救われたこともあるのに今は本当に怒りしか湧かない。真面目な顔をして任務()を遂行しようとしてくるこいつも気に入らない。
「わかったよ…。その代わりお前も脱げよ」
「なぜ僕が」
「僕だけじゃ恥ずかしいからに決まってるだろ!」
「致し方ない」
芥川がなんの躊躇いもなく寝巻き用のTシャツを脱ぎ捨てる。早くしろ、と視線で訴えられ、僕も同じように服を脱いだ。
たまに見ているはずの芥川の体は相変わらず細く、けれど前よりもついた薄い筋肉がこいつも男であることを強調している。
「背中を見せろ」
「はいはい…」
「しかし、こうしてみると」
奴の体温の低い指が、背筋を辿る。肌が粟立ち、夜のやりとりが思い返され、自然と体温が上がる。そしてまた指のことを明確に意識せざるを得なくなる。
「中々見当たらぬ……」
「し、知らない」
「……一つ」
「ひっ……!」
トン、と指が当てられ、肩が跳ねた。
「何をそんなに顔を赤くしている」
「何でもないから早く終わらせろ…//」
「今日の処は終いだ。否、じっくり余すところなく数えるのも良いかもしれん」
「は…?」
「大人しく抱かせろ」
床に倒され、覆いかぶさってくる芥川。
ムードも何もないが、僕たちらしくてありかもしれない。
腕を奴の背中に回して思いっきり爪を立ててやれば、悪人の顔で笑う悪食から貪るような接吻をされた。
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