コイル

□「狙ったに決まってるだろう」
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ぱちりと目があった。
互いに仕事中で、会うことなんて早々ないし、僕には鏡花ちゃん、芥川には樋口さんが一緒にいたから目があったとはいえそのまま何事もなかったかのようにすれ違って、オフの時のどうでもいい話題になるかな、くらいだと思った。
「おい人虎。目があったのに挨拶もなしとは無礼だな」
「お前のそう言うところが僕は嫌いだよ!」
樋口さんを放ってこちらに近づいてきた上に鏡花ちゃんを無視して僕にだけ話しかける。教育がいいのか悪いのか分からない。
「嫌いとはどう言うことだ。この場で八つ裂きにして体に聞いてやろう」
「いちいち物騒だな!!そもそも今は昼間だ!事件を起こそうとするな!!!」
「僕には関係のないこと」
「大ありだろ!!」
少し周りからの注目を集めだした。不味い、とようやく察する。
仕事中なのにプライベートでの話をしすぎた。
「ああもう分かったよ、今日お前の家行くから。明日は非番だし。それでいいだろ?」
「ふん。そう言うことならばいいだろう。20時ごろに帰宅の予定だ」
「はいはい。そのくらいに飯買って行く」
「貴様が作れ」
「はぁ?!ったく…」
「では、また」
「早く行けよ」
黒の外套が元の位置に戻るのを見て、鏡花ちゃんに行こうと声をかけた。
「…仲、よかった」
「あ、あぁ…。内緒だよ」
「うん………」
今日は仕事を早く終わらせなきゃな、と夕飯の献立を考えながら依頼場所へと向かった。
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