コイル

□〇〇しないと出られない部屋
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「なんだよ、この部屋…」
「….……」
四方八方を白だけで囲まれた箱の中のような部屋。調査帰りに鏡花ちゃんへのお土産でも買おうかなぁ、なんて思いながら商店街の方へと足を向けた瞬間にここにいた。
しかも何故か隣にこいつがいる。
「おい芥川」
「なんだ人虎」
「お前はこれの正体が分かるか」
「知らぬ。ただ、何かしらの条件を満たさぬと出られない部屋を作る異能者がいると聞いたことがある、その類だろう」
「条件ってなんだよ…」
「貴様の目は節穴か?」
奴の異能で首が部屋に唯一ある扉の方へと向けられる。そこに先程まではなかった張り紙があった。
「手を、五分間繋いでないと出られない部屋ぁ?!?!」
「煩い」
「なんでこんな奴と!!」
「僕とて同じこと」
「でもどうするんだよ!太宰さんが迎えにくるまで待つって言うのか?」
「…貴様のような無能と同じ部屋になどいてたまるか」
「あぁそうかよ!!」
五分間もこいつと手をつないでいるなんて、自殺行為もいいところだ。だが探偵社からの救援がいつになるかもわからない。どうするか…。
隣にいる芥川は何も言わず、ずっと張り紙を見ていた。こんなに僕は悩んでいるのに、と腹が立った。
「(僕だって強くなったんだよ!!!)」
覚悟を決めて手を掴む。異能による攻撃に身構えているが、予想に反して何もされなかった。
「あくた、がわ?」
「見るな!!」
顔をそむけれられる直前、林檎のように赤く熟れた芥川の顔をしっかりと見てしまった。

残り3分30秒、人生で一番気まずい時間を過ごすことになってしまう。
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