導体

□甘い物には甘いモノが隠れている
1ページ/1ページ

「与謝野さん!」「与謝野先生!」
「どうしたんだイ?乱歩さん、ナオミ」
時計の針がそろそろお八つ時を指そうとしているという頃合いで、探偵社の医務室に入ってくる2人、という光景に妾は自然と頬を緩めた。
「事件解決しに行ったら箕浦くんにお土産だーっておやつ貰ったから食べよ!!今日はもう事件起きないし!」
「おや、そうなのかい。乱歩さんがいうなら安心だ」
「商店街にお買い物に行ったらいい茶葉が手に入りましたの。私もご一緒したいですわ」
「もちろんだよ、ほら、ナオミもおいで」
部屋の端に備え付けられたソファに座れば、隣に当たり前のように座る乱歩さん。妾の向かいに上品に腰がけるナオミ。
卓に並べられた饅頭と紅茶という不思議な組み合わせのお茶会が始まった。

「それを僕がパパッと解決してあげたんだよ!この名探偵の手にかかればそう難しい事件でもなかったけどね!」
「流石だね。妾にゃさっぱりわかんなかったよ」
「与謝野さんもまだまだだなぁ!でも大丈夫!この名探偵に任せておけばどんな事件でも解決できるからね!!」
「頼りにしてるよ」
乱歩さんの持って来た饅頭は名の知れたお高めの饅頭だった。餡子の程よい甘さが口いっぱいに広がって幸福感で満たされる。
「それでお兄様ったら書類を持ったまま転けてしまって。国木田さんが書類だけを助ける、という変な感じになってしまいまして…w」
「そりゃ大変だ。怪我したんならあとで医務室を尋ねるように伝えて起きなよ」
「かしこまりましたわ」
「妾がいない間にそんな面白いことが起きていたとはねェ…」
ナオミの持ってきた紅茶は少し苦味のある大人の味だ。ストレートで飲むと、饅頭の甘さをすっきりとさせてくれるし、何より美味しい。
二人の持って来たものの相性は見た目に反してバッチリだった。
「……与謝野さん、アーンしてよ」
「はいはい、あーん」
甘えん坊も名探偵のために饅頭を半分に割って口元に持っていけば、なぜか指ごと食べられた。饅頭に夢中になりすぎだろうと苦笑いをしながら引き抜こうとしたら手を捕まえられる。
「??…っ?!////」
咀嚼を行いながら舌で指を、手を思いっきり舐められた。器用に動かされて、くすぐったくて、恥ずかしくなっていく。指の間まで丹念に舐められて、下腹部が持ってはいけない熱を持ちそうになった。
「ご馳走さま」
「っ何すんだィ、」
「べっつにー??あ、僕この紅茶苦くてやだから砂糖ちょうだいよ!」
「こちらにございますわ」
正面からの声にハッと我に帰る。そうだ、ナオミがいたんだった。
「先生、私もあーん、したいですわ」
「へ?」
「はい」
先程、妾がやったように饅頭を2つに割り口元に持って来られる。せっかく差し出されたのだからと招き入れるや、グッと苦しくない程度に押し込まれた。
「っふ?///」
口の中をナオミの細い指がかき回してくる。なかなか飲み込めない苦しさと、粘膜の薄い部分を的確に刺激される動きに、益々熱がたまる。
つ、と涎が口元から溢れ出して漸く指が抜かれた。ドロドロに溶けた饅頭を軽く咀嚼して飲み込みながら、ナオミにハンケチを渡しておく。
「…ちょっと顔を洗ってくるよ……//」
そう行って顔を隠しながら席を立った。

「……あーあ、行っちゃった」
「行ってしまいましたね」
部屋に残された2人は無意識のうちに息をつく。
「ていうかまだ諦めてなかっただね、女の子同士ってわかってる?」
「そういう考えを先生は嫌ってらっしゃるのでは?名探偵も、女性の前ではかたなしですわね」
「うるさいよ」
二人とも軽口を叩き合いながら、その中に特大級の悪意を込めながら、会話を交わす。
2人が狙うはたった1人の女性。
探偵社の果断なる貴婦人、与謝野晶子である。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ