導体

□夜の街での出会い
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目の端に見覚えのある濡羽色が入った。今日も金色の美しい蝶が光を反射してより一層の輝きを見せている。
その反射する光がきついネオンの光でなければ。
ここが夜の街でなければ。
彼女の腰に腕を回す不届きものがいなければ。
濡羽色の髪も至極色の瞳ももっと美しかったと断言できるであろう。
「やぁやぁやぁ!久しぶりだね、探偵社の麗しき貴婦人!!」
「?!かっ…?!?!」
「なんだね、君は」
不届き者を視線だけで観察する。目によく慣れた仕立ての良い背広。うちの美丈夫達が着た方がいくらかましであろうと思うほど服に着られた中身はこの夜の街によく似合う気持ち悪い情欲を宿していた。見覚えのあるその顔を化学式で埋め尽くされた自身の脳内から引きずり出す。
「あぁ、中央の上役様か」
「?!」
「しかもあまりいい噂は聞かない」
「か、梶井…、」
弱々しい声が聞こえ、不届き者から視線を外してそちらをむけば、普段の強気で正義感の溢れる顔からは想像できないような怯えた目をした彼女がいた。
正直彼女に干渉する必要などないのだ。
その気になればこの程度の男など赤子の手を捻るように倒してしまうだろう。男尊女卑を嫌う彼女が大人しくこの街にこの不届き者と一緒に来ているのだから事情があることは明白なのだ。
「彼女は僕は頂いていくよ。上役様にやるには上物すぎる」
「きっ!貴様!!一体何者だ!!」
「ポートマフィア、といえば十分かな?」
口を開けて道の端で間抜け面を晒す不届き者から彼女を奪い去って、その場から離れる。無意識に抱いた肩が微かに震えていた。
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