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□似合う
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「花札をしよう!!」
と乱歩さんに言われ、一時間。妾の調子が悪いのか乱歩さんが調子がいいのか、何度やっても負け続きだった。
「ふふーん!!今日は与謝野さん調子悪いね!」
「そうみたいだねェ…。あ、そういえば賭けるものを決めてなかったじゃないか、どうする?」
「んー……、あ、」
考える仕草をする名探偵に今日は全敗だし何言われても仕方がないな、なんて財布も中身を思い出しながら覚悟を決める。
「今日社長出張なんだよね」
珍しく要領を得ないその言葉の意図が掴めないままに乱歩さんの言う通り、なぜか彼の家にお邪魔することになった。

そして今に至る。
否、これじゃ言葉が足りなさすぎて伝わらないけどちょっと受け入れる時間が欲しい。
「やっぱり似合うと思ったんだよねー」
黒の床につきそうなほど長いスカート、白いフリルのついたエプロン、スカートと同色のリボンが胸にはあしらわれている。
俗に言うメイド服というやつだ。
うずまきで見るものよりかは洋風で、しかし落ち着きがある。実用性の高そうなものだ。
「なんでこんなものが…?」
「この前社長と納屋の整理したら見つけた。」
曰く、整理中に見つけたそれを福沢はたいそう不機嫌な顔で切り捨てようとしていたらしい。興味本位で超推理を使ったら若い頃に仕事の関係で着たとかいう誰得なことを知ってしまい、それを見て思いついた…
「じゃあ今日乱歩さんの調子が良かったのは…」
「超推理使ったよw」
「やっぱり………」
「ねぇねぇ!お帰りなさいませご主人様って言ってみてよ!」
「こういうのはナオミとか春野とかの方が似合うんじゃないかィ?」
言われると思っていた科白を回避するためにわざと話題をそらすと不満げな顔で腕を取られグッと引き寄せられる。
「僕が与謝野さんに着て欲しくて、僕が与謝野さんに言って欲しいんだけど?それとも、」
乱歩さんの口元が吐息の音まで全てを拾うほどに耳の近くまでやってくる。心臓がうるさく鳴り始めた。
「ご主人様、に逆らってみる?メイドさん」
カッと顔に熱が上った。
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