配線

□気持ちなんてわからない
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「乱歩さんって本当に与謝野女史と付き合ってるんですか?」
「何を言ってるんだよ太宰」
ソファに寝転がり、パラパラとポオの新作の原稿を読んでいた乱歩が顔を上げる。
太宰は普段と変わらない怪しい笑顔で乱歩へと話を続ける。
「だって仲がいいと言うのはわかるのですが余りにも男としての態度が素っ気ないというかあれなら普通の女性は気を悪くしてしまいますよ」
「例えばどんなところが?」
「そうですね……、嫉妬をしないところとか、あとはもう少し大胆に自分のものだと言うことを主張した方がいいかもしれません」
「参考にするから続き」
「…………二人は恋人同士、なんですよね?」
「そうだけど?」
太宰の顔からスッと笑顔が消える。乱歩はその変化には気づいたが、深くは追求せず、彼の次の言葉を全く。
「乱歩さん。与謝野女史といて、どんな気持ちになりますか」
「楽しいよ。与謝野さんは僕ほどじゃないにしろ頭もいいからね、ちゃんといろんなことを察してくれるし余計なことはしないし。楽なんだよね」
「そう、ですか」
太宰の現在の心中を表すことは難しいだろう。常に冷静で、激情に駆られることのない太宰が自分でも処理しきれないほどの混乱とその中から導き出された回答に驚いているのだから。
「で?」
「あ、はい。行動としては一緒に帰られるのなら探偵社の全員に見えるように手を繋いで帰ってみるとかどうでしょう」
「ふぅん、なるほどね」
「おい太宰!!!!!」
「国木田くーんwそんなに叫ばなくても聞こえてるよぉ〜?」
会話を遮るようにして聞こえた国木田の声に太宰は素直に応じた。
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