配線

□真っ白な空間
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「与謝野さん!!!!!」



バチンっ、と派手な音を立てて映像が途切れる。
息が上がってるし、汗もかいていて気持ちが悪い。
そこは暗い場所だった。見覚えのある天井は確かに妾の部屋だった。さっきのは夢だったのか、夢にしてはたちが悪いほどに鮮明だった。
自分の隣に蒲団とは違うぬくもりを感じて、先ほどの声を思い出す。
「与謝野さん、大丈夫…?」
‐乱歩、さんかい…???
「そうだよ。覚えてないの?二人で一緒に寝ようって言ったのは与謝野さんじゃない。」
‐そう、だっけ……?
よく覚えていないが、らんぽさんがいうのならそうなのだろうと、妾の中で区切りをつける。
薄暗い部屋だ。夜で、電気がついてないから当たり前だが、彼の姿がよく見えない。
「うなされてたよ。」
‐あぁ………。
「そんなに怖いユメだった?」
こわかった、みんなが死んじまって、ヨコハマが燃えていたんだ、呪詛のような声も聞こえて、
なんて弱音がはけなくて、無意識にうつむいてしまう。
「そっか」
一言だけ、帰ってきた言葉とともに、名探偵にばれてしまうなんて当たり前か、なんて考えた。
背中に腕が回されて体が密着する。人肌の、乱歩さんのぬくもりが近くにある。
それだけで十分だった。
そんな温かさの中で、妾はまた真っ黒な空間に落ちていく。
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