配線

□距離を縮める
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目の端に映る光に薄く目を開いた。暗い部屋にカーテンの間から漏れ出る光。そばに温もりを感じて身をよじれば、筋肉はそれほどでもないが、しっかりとした体つきの男性の体。
ベッドの感触と部屋の様子が違うことに気づき、頭が一気に覚醒した。昨晩のことが鮮明に思い起こされる。
離れなきゃ。
それしか考えられず、身を起こそうとすれば、少しだけ高い位置にあった彼と目があった。
「おはよう」
いつも通りの笑顔で言われ、いつもと違う強い腕に腰を抱き止められて動けなくなる。
「体は大丈夫?」
「っ……?」
「腰とか痛くない?」
「だい、じょうぶ…」
「ならよかった」
ずっと好きだった。
友人として付き合っていくのが日に日に辛くなって口から溢れた昨日の言葉。
もっと辛くなるのは分かっても、我慢なんてできなかった。
「与謝野さんはさぁ、早とちりなんだよ。」
彼の翡翠色の目が自分を捉えている。そこに映る妾の姿のなんと情けないことか。
痛いくらいに強く抱きしめられて、短い接吻を送られる。少しカサついた唇から伝わる熱が自分を優しく包み込むようだった。
「好きだよ」
「…うん」
「大好き」
「……ん」
「愛してる」
「…………」
「与謝野さんは?」
「……勘違いしても、イイのかい?」
彼の胸に縋り付く。こんな顔見せられなかった。
「妾は乱歩さんが思ってる以上に馬鹿な女だよ」
「そんなことないよ」
「昨日だって…」
「気にしてない」

「与謝野さんから、ちゃんと聞きたい」

その声が予想以上に不安そうで恐る恐る顔を上げれば、彼もまた泣きそうな顔だった。
「…好きだよ、乱歩さん」
「知ってる」
「大好きなんだ」
「僕も」
「愛してる、」
「うん」
どちらからとも言えないままに距離が縮まる。
朝日が部屋を照らす中、妾たちはやっと1つになれたような気がした。
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