dream


□芽生えた気持ち
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「ん〜…
なんか部屋が涼しくなったら今度はお腹すいたなぁ…」




ぐぅ〜ぐきゅるるるぅ…と恥じらいもなくクレハが盛大な音を奏でると


「女のくせにデケェ音だな」とメルルに鼻で笑われる。



彼にはなんて言われようが別に気にしないが
本を読んでいるダリルの肩が少し震えているのに気付き
クレハは顔を真っ赤にして恥ずかしさのあまり
やだ〜!と、顔を手で覆い隠す。


そんな彼女の恥じらう姿を見てメルルは扱いの差に不満を感じたらしく抗議する。





「おい、なに『やだ〜!』とか女らしい反応してんだよ。
俺と態度が違いすぎじゃねぇか??」




「え?当たり前でしょ?
動物の前でオナラをしても恥ずかしくないべ」



ま〜…確かに…と納得しつつ
メルルは「誰が動物だ!」
とまたブツブツ文句を言ってるがクレハは聞こえないふりをする。





「そんな事よりもお腹がすいたよ!」



なにか食べるものはないの〜!?




クレハがジタバタと転がりながら暴れ出すとうるせぇ、とメルルにお尻に軽く蹴りを入れられる。



「レディの可愛い安産型のお尻に何すんだ!」



クレハがメルルに倍返しで蹴りを入れると
暫く、ギャーギャー二人で取っ組み合いをして騒いでいた。

そんな最中でも、ダリルは初めて読む魔法界の本を集中して読んでいたが
ダリルが何かを思いついたらしく、本を閉じてある提案を出してきた。





「そうだ、良ければ一緒に畑にいく??」



「え!?畑があるの!?」



「うん、色んな作物の畑があるよ!」



今はとうもろこしが豊作だよ!というので
焼きトウモロコシをしたい、と私が提案を出すと
ソイソースで食べるというトウモロコシに興味を持った二人がその提案に乗る。





「やった!
海外で焼きトウモロコシが食べれるなんて最高!」



「そんなに美味しいの?」




「そりゃあもう、ベリベリデリシャスよ!」




「よっしゃ、じゃあ大量に取ってこうぜ!」




「ひゃっほぅ〜!!!!」




テンションがMaxまで上がったクレハは
急いでリュックからラベンダー色のワンピースを引っ張り出して服をそのまま抱えると
姿くらましで一瞬で外に移動する。


二人は彼女が一瞬で消えて、何が起こったか
わからずにいたが、
下から「早くおいでよー!」という声が聞えて
あぁ、テレポートしたんだな、と当たり前かのように納得してしまう。


二人はもう彼女のすることにはあまり驚かなくなってきてしまった。


慣れというものは、本当に恐ろしい。



二人が慌ててクレハを追うように
屋根裏の窓から梯子で降りて
彼女のいる裏庭へとたどり着くと
そこには、いつの間にか小さな手に虫網と虫かごを握りしめているクレハがいた。





「お前…ガキかよ…。
さすがにソレはねーよ・・・」




「え?ダリルが喜ぶかなって思ったんだけど…」




10歳の男の子の夏休みといえば
カブトムシでしょ???

満面の笑みで彼女はダリルにピースサインを送るも、二人からは冷ややかな視線を浴びる。





「ごめん、クレハ。さすがにそれは僕もちょっと…」


理解、できないかも・・・


ダリルからドン引きの視線を感じれば

ショックを受けたクレハは
『一人でムシキングになるからいいもん…』と、イジケ出す。


そんな彼女を見てメルルが
お前がなんとかしろよ、と面倒くさそうにダリルに投げやりにする。


ダリルは必死で何か他の話題に逸らそうと
彼女を観察していると
今までパンツを履いていたクレハがこれまでの服装とは全く違う系統のワンピースを着ていることに気が付いた。




「あれ、クレハ。
そういえばいつの間に着替えたの?
そのラベンダー色のワンピース可愛いね?」




綺麗な黒い髪と白い肌が映えて似合ってるよ!とダリルが褒めちぎれば
クレハの表情はコロッと変わりえへへっと
口元が緩みだす。




「本当??これ、特注なの!」

 

虫網と虫かごを放り投げてその場でくるりと回ってご機嫌でワンピースのお披露目をする。




『『案外クレハってチョロいなぁ・・・』』



しかし、ダリルが褒めた言葉は話題を逸らすための嘘ではなく、彼が心から思った本音だった。


初めて出会った時には、彼女は薄汚れたシャツにどこかに引っ掛けたのか、
穴の開いたボロボロのジーパンというあまり女の子らしくない恰好だったのだ。


今までの彼女の言動からだったり
やることなすことに
とても彼女の言う「名の知れた家柄の娘」
という雰囲気は一欠けらも感じなかったのだが
彼女の今の姿を見て、本当にお嬢様なのかも…そう思えてしまう。


そんな恰好で虫網と虫かごを持って満面の笑顔でいるのもどうかとは思うが…




「これから畑に行くのには少し勿体ないけど
すごく似合ってるよ、クレハ」




「…ありがとう、ダリル」




ダリルが照れくさそうにクレハを褒めれば
彼女も照れくさそうに微笑む。

いこっか、と
二人はどちらともなく手を差し出して握りしめると、トウモロコシ畑に向かい歩き出す。





「おい、俺もいるんだけど?」







…メルルの存在を忘れて置き去りにして。







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