dream


□魔女と少年
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《サーペンソーティア !》



ボトッ…  シャアアァァァ…!!!



《ヴィペラ・イヴァネスカ》





《サーペンソーティア 》


ボトッ・・・・


《ヴィペラ・イヴァネスカ》



《サーペンソーティア 》

《ヴィペラ・イヴァネスカ》



《サーペンソー

「ねぇ、さっきから何をしているの?」




ダリルのその質問により杖を振る私の手は止まった。

その様子を見て安心したのか、
木の後ろに隠れていた彼がひょっこり出てきた。



先ほどから様々な種類の蛇を出したり消したりしているクレハ

数分前に巨大なアナコンダが杖から出てきたのをみてダリルは


「キャーッ!」


と女の子のような悲鳴をあげて私から距離をとり
木に隠れていたのだ。



「どうして蛇を出したり消したりしているの?」



彼はもう蛇はいないかどうか確認しながら
恐る恐る私のほうに近寄ってくる。



「えっと…あのね、もう食料が少ししかなくて…
このままじゃ足りなくなりそうだから蛇を食料として確保しようと思ったのだけど…」



その、どれが食べれる蛇かよくわからなくて…


う〜ん…とクレハは頬をポリポリと掻く。




夏休み中、友人のルシールと共に父から
サバイバルのレクチャーを受けたクレハ

しかしその時捌いて食べたのはハブだけで
その他に食べれるヘビがあるのかないのか
これっぽっちも分からなかったのである


とりあえずハブさえ出てきてくれればと思い
蛇を召喚する魔法を使ってみるも、
どうやらこれはランダムで選べないらしい。

出てくるのはカラフルでエゲツない見た目の
食べれるかどうか判断が難しいものばかりだった。


何度も挑戦するも
あの時見たヘビは出てこなかったのだ。



「なんだ、だったらもっと早く言ってよ!

僕、家が山の中にあるからそういうの詳しいよ!」


家に食べるものがなくなると、たまに父さんがとってきて皆で食べるんだ。
僕にも協力させて、とダリルが私の服の袖をギュッと握ってきた。


まじか、
普段から蛇食べるとか、ディクソン家ワイルド過ぎだろ…


でも私一人ではどうにもならないので今のダリルは百人力だ

とても助かる。お言葉に甘えて彼にも手伝って貰うことにした。




「じゃあ、判断任せてもいいかい?相棒?」


君にすべてが掛かっているよ、私の命は君に預けたも同然だからね。

とプレッシャーをかけて彼の肩に両手を置く。



「了解!任せて!」


私がバリバリ、プレッシャーを掛けたのにも関わらず
頼られたことが余程嬉しいのか、ビシッと敬礼する彼の目はとても輝いていた。



「それじゃ…いくよ…?」




3,2,1・・・・・・・




《サーペンソーティア !》



ボトッ・・・・



なんとも鈍い音がして杖から黒い模様の蛇が現れた。


一瞬何が起きたかわからなかった蛇だが、いきなり召喚されたことに腹を立て
私たちの方へと向き直り、シャァー…と静かに威嚇しながら近寄ってくる。



今まで現れたヘビよりかは小柄だが、殺気に関しては…アカン、これアカンやつや。




「ダリル…どうかな…?」




私は彼の腕を掴みながら、徐々に距離を縮めてこようとする蛇から
後ずさりする。こうしている間にも一瞬も目を離すことはできない。




「えっと、え〜と…この模様は確か…


うん、大丈夫!

これ、食べたことのある蛇だよ!!!!」




そう声に出した瞬間

ヘビはターゲットを絞ったのか、ダリル目掛けて飛び掛かる

が、クレハがそれを阻止し、間一髪で護りの呪文で跳ね返した。


吹き飛んだその時の衝撃で蛇は動かなくなり、ピクピクと痙攣し始める


どうやら失神したようだ。



ダリルとクレハは顔を見合わせニヤリと笑うと



「やったね、相棒!」



イエェェ〜イ!!!とハイタッチをして二人は喜んだ。



そして新鮮なうちにと、すぐに蛇の処理に入るも
蛇の頭を切り落としてオエェ〜…となっているクレハの代わりに
ダリルが進んで処理をしてくれた。


血抜きをして皮や内臓をズルッと向くその逞しい姿は
さっきまでキャー!なんて女の子みたいな声を出していた少年とは思えない。



「ダリル、カッコイイ…」



その姿をじぃ〜・・・と体育座りをしながら見つめてると
そんなクレハに気付いたダリルは照れくさそうに



「そんなに見られたらやり難いよ…」



と顔を逸らした。


その後
蛇の処理から後片付けまで彼はテキパキと動いて
私の出る幕はこれっぽっちもなかった。


きっと彼は家庭的で奥さん想いのいい旦那さんになるんだろうな〜…


彼があと5歳年をくっていたらきっと私は完全に惚れていただろう。


あ〜…神様のいぢわる…



そんな事を考えながら私はダリルが集めてくれた大きめの石を円状に囲い、その上に網を置いて魔法で火を灯す。

ご飯をセットした飯盒と蛇の肉を炒める為の小さなフライパンをセットした。ん、完璧。

ガーリックパウダーと醤油で炒めたヘビ肉をダリルは気に入ってくれたようで
喜んで食べてくれた。
(やっぱり調味料は持ち歩いといて正解だった)


どうやら初めて食べる日本の白米も気に入ってくれたようだ。


ご飯を食べ終わり、お腹がいい感じに膨れ上がった所で
私たちはテントの中にもどり寝転ぶ。

テント横の小さなメッシュの窓から覗くと
辺りはもう薄暗く、夜になりかけていた。



「ふぅ、なんだかあっという間に1日が終わっちゃった…ごめんね。」


私がヘビに苦戦していたせいで
結局ここから動かずに過ごしてしまった…

彼の家も探してあげなくてはいけないのに…とクレハは少し落ち込む。



「うん…でも僕はクレハと出会って、今までで一番楽しい1日だったよ?」



そんな事を言ってくれる、ダリルの言葉が嬉しくて
「可愛いやつめ〜!」と抱き着き頭に軽くキスをしてやれば

彼は顔を真っ赤にして私の腕からするりと抜けだした。



「…クレハって誰にでもそうするの?」



「しないけど…えっ、怒ったの?」



そっぽを向いてしまったダリルをこちょこちょと擽れば
彼は身をよじらせて必死に笑いを堪えながら


「ッ、怒ってないよ…」

と、先ほどのムッとした顔とは違い
少し嬉しそうな顔をした。

じゃあ、いいじゃーん!と更に擽ると
我慢できなくなったダリルはやめて〜!と大笑いする。


その後、完全に暗くなった夜の星空の下
テントの中、二人で色んな話で盛り上がり
少し前まで絶望と寂しさで押しつぶされそうだった私の心は彼といることでとても癒された。

傍から見たら迷子の子供が二人いるなんて思いもしないだろう。

それくらい私たちはお互いの暗い部分を忘れて
心から一緒にいるこの時間を楽しんでいた。



「明日はここから移動して、

なんとか抜け出せる道を一緒に見つけようね」



そう彼に話しかけたが、
返事はいつまで待っても返ってくることはなかった。

代わりに横からは規則正しい
彼のスー…スー…という寝息だけが聞こえてくる…


顔を覗き込むと彼は涙を流しながら寝ていた。



そうだよね、まだ10歳…

たとえ置き去りにするような親でも、彼は必要としているはずだ。

寂しかったよね、怖かったよね…


6日間も一人で過ごして、安心して眠ることもできなかっただろうダリル。


かわいそうに、ゆっくりおやすみ。



「絶対、家に帰してあげるからね」



そういって彼の頭を撫でればくすぐったそうにして
彼は寝返りをうち、反対を向いてしまった。

ふふっ。



さぁ、明日は忙しくなりそうだ。


最後にクレハは周りを確認してから
テントに保護魔法を掛けて、ランプの明かりを消す。


横で眠る彼に再度「おやすみ」と小さく呟いて
クレハはそのままゆっくりと眠りに落ちた



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