dream


□夏に訪れた春
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本格的な夏の日差しが、


肌が赤く焼ける程に これでもかと照付ける,



石畳でできたその広場では

大勢の生徒が友人との別れを惜しみ抱き合い

恋人同士であろう生徒は

手を握りしめたまま見つめあい

寂しさのあまりか、どちらとも「またね」を言えず中々別れずにいた。



暑さのせいの汗なのか、別れを惜しむ涙なのか
頬にそんな何かを伝い流す者もいた。





この光景はいったい何度見てきたことだろう…





自分には関係ないと思いつつも

女子特有の共感性により

見ているとこっちまでジワジワと何かがこみ上げてしまう。

絶対日本ではこの光景は味わえないから尚更だ。


ちなみに日本の小学校に通っていた時も
合唱コンクールで涙を浮かべた女子につられ
私は大号泣して周りからドン引きされた


そんな事を思い出しながらも
涙が出そうになり、絶対流すまい!と目頭をつまみながら必死で堪えようと空を見上げる


そんなクレハをみて




「他人に涙するくらいなら、僕たちとの別れを惜しめよ!」



と、スコーピウスから魔法生物の図鑑でチョップを喰らうのであった…




「ッッたーい…!!!!何すんのよ!」



「ほら、僕たちとも別れの時間だぞ、存分に悲しめ」



「何いうてん、
どうせコンパートメントでも一緒じゃないかデコ助」



偉そうにすんな!とスコーピウスにプロレス技をかけて

「ギブギブ!」と顔を真っ赤にする彼とじゃれあっていると


あぁ…これもしばらくできないんだな…


とちょっと寂しくもあったりする


名残惜しくてなかなか絞める力を弱めることができない

おし、このままやっちまうか。



クレハがそんなことを考えていると


真横にいるにも関わらず
存在を忘れられていたアルバスが
ムッとしながらそれを静止し、疑問に思っていた事を口にした。



「っく…アルバスもっと早く助けてくれよ
死ぬかと思った…

お前はトロールか…」


「あん?またおでこにルーモスされたい?」


「なんだとっ!!」


「…ていうかクレハ

君、結局休暇中はどうするの?僕たちの誘いの返事まだ聞いていないんだけど…」


「「あっ…」」



そう、いよいよ明日からは長い長い、夏休暇!



だったのだが…



地獄の罰則に追い詰められすぎて、


休暇中の皆のお誘いはすべて

『多分今年の夏は牢獄で過ごすから無理』

と、断ってしまっていたのだ…



しかし、アルバスとスコーピウス


別名【心の友】が罰則を手伝ってくれたおかげで
私は今、無事にここに立つことができている


罰則が終わらなければホグワーツに残るよう言われていたのだが
自分の故郷へ帰省することが許されたのだ。



でも二人の誘いも断っていたままのことはすっかり忘れていた。


めんごめんご。


ちなみにちゃっかりルシールとはショッピングの約束を取り付けていたりする。





「「で、どうするの???」」



と、二人がジリジリと詰め寄ってくる。


これは絶対ノーとは言わせないつもりだろう


ヘタレのスコーピウスはともかく
アルバスの顔がめっちゃ怖い。

断れば眼球から《アバダ・ケダブラ 》が
ぶっ飛んできそうだ。



「…ど、どちらも勿論行きたいです!

 え〜と…

 今更だけど、行ってもいいかな…?

(ていうか行かないと逝く羽目になる)」



その答えを聞いた二人は満足したのか

クレハの背中をバンッ!と思いっきり叩き

肩に腕をまわして

ニカッと無邪気な笑顔で笑ってくれた



「もちろん!」


「じゃなきゃ課題も手伝わないさっ」



イエェーイ!心の友バンザーイ!

とハイタッチして小突き合っていたら


嗅ぎ慣れた
コットンキャンディーのような甘い香りがした

この香りの人物は一人しかいない…



「!!!

 このニオヒは…ルシールちゃん!」



グリンッ!

と首なしニック並みの回転率で首を後ろに回せば
そこには小さく『ヒィッ』と悲鳴をあげた
ルシールが驚きながら立っていた。



「っもぉ〜…
 後ろから驚かそうと思ったのに」


「へへっやっぱりルシールちゃん」


 大好き大好き〜と頬ずりして
 抱き合っていると
(隣でキモッて聞こえた気がしたが無視)

 ホグワーツ・エクスプレスの場所まで送ってくれる馬車が迎えに来た。
 

この馬車はなんとも不思議で
馬車とはいえ、それを惹く馬がいないのだ。
いつも独りでに動き出す

中にはその正体を見たという人もいるらしいが
私は一度も見たことがない…


う〜ん…ホグワーツは本当に不思議でいっぱいだ



そして到着した馬車に私、アルバス、スコーピウスの順で乗車していると

ルシールが気まずそうにアルバスとスコーピウスに

「私も…いいかな??」尋ねた。



私たち三人は顔を見合わせて

大げさにやれやれのポーズをした。



「何言ってるの、ルシールは《スリザリンの友》として公認されてるんだよ」


「そうさ、寮まで出入りしてるのに今更だよ」


「そうそう

さ、レディーお手をどうぞ」



いつも私にはそんな扱いしないくせに

スコーピウスはルシールの手を取り

アルバスは鞄を持ってルシールをエスコートした。



「おい、ふざけんな
私にはいつそんな扱いしてくれたよ?」


レディー扱いなんか一度もしてくれたことないじゃんかー!とプンスカ抗議すると


「クレハ、
レディーはそんな言葉づかいはしないぞ。

お前の品性は本当にトロール以下だな。」


まだメスのトロールのがマシ、
と言葉を継ぎ足されブチ切れた



「あんだとー!!!」


あの頭からっぽのトロールと一緒にされた、いや、それ以下の扱いをされた事に腹が立ち
スコーピウスに掴みかかると


ルシールが


「クレハ!!下着が見えてるわよッ!!」


とキャーキャーいいながら私のスカートに
ハンカチをあてて隠してくれた。

なんだこの可愛い女の子は。出木杉ちゃんかよ。


そんなやり取りをしていると

隣にいて呆れながら見ていたアルバスが

深いため息とともに



 「クレハって、黙ってれば可愛いのに」



と、一言こぼした








アルバスのこの発言により


私が少しの間大人しくなったのはいうまでもない。








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