dream


□不良の騎士
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「おーい、3人とも!!

今日はもう切り上げるぞ〜!」



真夏の日差しと、トウモロコシ畑の緑に囲まれた中心で
その言葉を待ってました!と言わんばかりの早さで
汗だくになったクレハは地面に仰向けに倒れ込んで寝転がる。



ランドンの言葉を聞いて
一緒に収穫をしていたダリル、ジェリーも同時に地面に座り込み、
肩に掛けていたタオルで汗を拭う。






「や、やっと終わった…」



「だね…さすがに僕も疲れたや」



ダリルはクレハの横に移動すると
同じく地面に寝転がる。

そんな彼に「お疲れさま」と呟いて
頭を撫でてあげようと思った彼女だが、自分の手が泥で汚れていることに気づき
少し迷いながらもその手を引っ込める。

そんな彼女の行動に笑いながら「クレハもね」と彼は笑顔で返す。




「あ〜…ダリルそのままこっち向いてて」



「…?なんで?」



「君の笑顔で元気百倍ア●パンマン」



「…クレハって馬鹿なの?」


大体、ア●パンマンって何…と、
一瞬変な目で見つめてきたダリルだったが
彼女の



「未来のお嫁さんに馬鹿とか言わないでくれる?」



というふざけた言葉に彼はむせ返り、思いっきり咳き込んだ。


なに動揺してるの?と彼女は彼の反応が面白くニヤニヤと笑う。


横にいるジェリーも軽くダリルを茶化したが
彼に睨まれたため
そそくさと急いで家の方へ駆けて行った。



からかう二人にムッとしたダリルだったが
彼女が汚れた手が触れないよう少し遠慮気味のハグをして「ごめん、ごめん」と謝ると
コロッと彼の機嫌は良くなった。





今日は夏休みの最終日。



といってもそれはダリルとジェリーだけだが…



彼女が働きたいとランドンに申し出てあれから一か月の時が経っていた。


話をした次の日から早速農場で働き

皆で協力して栽培、収穫、家畜の世話などを手分けして行っていたのだ。


そしてランドンは、ただ仕事をさせるだけではなく
色々な知識をクレハ達に丁寧に教えてくれた。

お蔭で彼女たちはこの短い期間で農業、畜産といろんな知恵が身に付き
もしかしたらこれから自分たちで育てることも可能かもしれない、と思えるほどにまでなった。


意外と器用なダリルと
力があるメルルとジェリーは強力なタッグで
ランドンも驚くくらい仕事ができていた。


二人も働くことの楽しさを覚えたそうで
前よりも表情はイキイキとし
メルルに関しては以前のような刺々しい態度が幾分か穏やかになっていた。



そして…クレハはというと…


ランドンの手前、下手に魔法を使うことができなかったため
この暑さの中一か月間、魔法を使わずに黙々と作業をこなしていた。

お蔭で彼女の菓子太りしていた身体も
スラッとしたモデルのような体型へと変っていた。


普段魔法に頼っている者が使えなくなると
こんなにも不便なのか…

というかマグルはよくこれで過ごしているな…

と彼女は心の中で今の状況を不便に思うとともに、魔法の素晴らしさ、便利さを改めて感じていた。




「…また、魔法界に戻れるといいな…」



「クレハ、なんか言った?」



「あっ…ううん、なにも?」



彼女は今の呟きがダリルに聞こえなくてよかった…と一瞬胸をなでおろす。



ダリルとこうして一緒にいることが今は幸せなのに
魔法界に帰りたいなんて…

贅沢というか…なんというか…

我儘よね。

それに、彼に元居た世界に寂しさを感じているなんて悟られないようにしなくちゃ。

きっと彼は私に気を使ってしまう…



彼女はうんうん、と一人で納得し
シリアスな面持ちから笑顔になったりと
百面相していると
横にいるダリルがそんな彼女を不思議そうに見つめる




「クレハ…とうとう暑さでやられちゃったのかな…?」








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