dream


□芽生えた気持ち
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「〜〜あ〜つ〜い〜ん〜だ〜よ!!」




太陽光のバカヤローーーーーー!!!

メルルのデコッぱちーーーーー!!!





薄手のキャミソール一枚に短パンという
無防備な姿で汗だくになっていたクレハは、
寝袋の上に大の字に寝そべりながらあまりの暑さに文句を垂れる。

高機能なエアコンもないこの時代に来てしまった自分に激しく後悔する。


といっても、
自分の意志で来たわけじゃないが…




ここはメルルに譲ってもらった屋根裏部屋。


二階の更に上ということもあり
この部屋には家の熱が集中してたまり
今ここは、蒸し風呂のような最悪な状態である。

窓を開ければ更に熱風が入ってくるという地獄絵図のような場所だ。





あ・つ・い!あ・つ・い!


なんだかとってもあつい!ほい!


昔ニュースで問題になって有名になった
騒音おばさんのリズムに乗ってクレハは床を叩きながら歌いだす。



そんな彼女を見て、鬱陶しいと
外野からは(主にメルル)ヤジが飛んでくる。





「暑いって禁句だろ。余計暑くなるからよせ!」




あ〜…もう…
お前のせいであっち〜な!!!とタンクトップを脱ぎ捨て
メルルは上半身裸のまま床に突っ伏す。



近くでクレハに借りた魔法生物の図鑑を見ているダリルも
大人しく本を読んではいるが
額には汗が浮かび、その度にシャツで汗を拭っている




「ダリルもやっぱり暑いの??」




「…うん、ちょっと。」



「てか、自分たちの部屋に戻っていいよ?
二人は無理してここに来なくてもいいのに…」



クレハがそういうと
メルルは「暇だから」というのに対し
ダリルは「…一緒にいたいから」と本で顔を隠しながら答える。


ダリルの答えについ嬉しくて口元が緩み
ニヤニヤしていると「気持ち悪ぃな」と、メルルに舌打ちをされた。


そんな可愛いダリルの為にもなんとかしようと
クレハは、
例のキャラクターのレジャーシートをリュックから引っ張り出し
両手で裾を持って何度かバサバサと調整して部屋に広げる。

見覚えのあるシートにダリルは興味を示し
読んでいた本を閉じて顔を上げた。




「クレハ、何してるの?」




「おいおい、なんだその黄色いブタみたいなセンスのねぇシートは…」



「これはブタじゃなくてゴールデンレトリーバーなの!
ま、そんなことはいいから黙って見ててよ。」



どうみても犬じゃねーだろ!と
メルルはシートを見ながらブツブツつっこんでいるが彼女は「邪魔だよ、」と彼をシッシッ!
と追い払う。



「さぁさぁ、私の特技見逃さないでよね?」


二人においで、と手招きをすれば
なんだなんだ、と二人は立ち上がりシートへと近寄ってくる。



「見ててね、いくよ?」



《アグアメンティ 》



クレハが呪文を唱えると
何もない筈のレジャーシートの上からは冷たい水がまるでそこが噴水かのように勢いよく湧き出てくる。


するとクレハは杖で水を掬うような仕草で弧を描き、湧き出た水を操り始める。

ソレはまるで生きてる龍のように姿を変え、
身体をうねりながらシートの上で浮遊する。

水で鱗など細部まで細かく表現された龍は
大きさは天井スレスレまでと、ダイナミックで迫力がある物へと変化した。


ダリルとメルルは呆気にとられ
初めて見るその光景を必死で目に焼き付ける。


もう一度クレハが杖を振るい


《グレイシアス》


と、唱えれば
その龍はピタッと動かなくなり
一瞬でピキッ…と音を立てて凍てつき
まるで水晶のようにキラキラと輝きを放つ。


今までただ蒸し暑かっただけの部屋の雰囲気はガラリと変り
美しい氷龍が佇むだけではなく、部屋の温度も一気に下がり涼しくなる



「マジですげぇな…」


「すごく綺麗だ……」



まるで生きているみたいだった!と興奮するダリルを見て、
もう一匹手乗りサイズの龍を作り

「今触れたらただの水に戻るから気を付けてね」

と、忠告しつつ
ダリルの手の上で踊らせてあげると、彼はそれを見て喜んだ。




「水や炎を生き物のように姿を変えるの、私得意なの」



すごいでしょ?と仁王立ちして偉そうにすれば
普段ならスコーピウスに

『ドヤ顔するな僕でもできる』

と小突かれるところだったが


「ほんと、お前すげーのなッ!」


とメルルが拳を差し出してきたので私も拳を出してコツンとぶつけると、
メルルは「お前は世界一の忍者だ!」と、ニカッと笑う。



やだ、何この反応すてき。

私ここにずっと住む・・・!




まぁ、忍者ではないんですけどね。




クレハはそんなことを思いながらも
メルルの反応が嬉しくて暫く二人で談笑していたが
二人のその姿を見てダリルが嫉妬し、
手のひらの龍をうっかり握りつぶしたことには誰も気が付かないのであった…




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