dream


□小さな赤い窓
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クレハ…


クレハ……クレハ


、きて……起きて…




心地よく響く、優しい声に
私は何度も何度も名前を呼ばれる

辺りを見渡せばそこは緑豊かに広がる草原に、綺麗な花たちが
風に揺られて踊っていた。


あれ…なんだろうこの懐かしい感じ


この光景、割と最近…

前にもどこかで…



思い出そうと考えていると、頭に優しい感触を感じて
そこで私は目が覚めた。




「起きた…?おはようクレハ」


「あ…ダリル。おそよう」



あれ…私、今なにか思い出そうとしてたような…

…ま、いっか。夢だし。



クレハはそう思うと
ふわぁ〜と口に手をあてがいながら盛大な欠伸を漏らすが
開きすぎた口は手で隠しきれなくなっていた。

痛む背中に手をあて、背伸びをしていると



「大丈夫?疲れた?」



とダリルが軽くマッサージをしてくれた。
本当にこの子は優しい子だ…

うまいね〜と褒めてあげれば彼は得意げにへへっと笑う。




「毎日父さんにしてたから、こういうのは得意なんだ」



私はその話を聞いて
親に少しこき使われているような気がしてしまい複雑な気持ちになるも
「そっか、お手伝いして偉いね」と今度は私が彼をマッサージしてあげた。




『さぁ、まもなく目的地に着きますよ』




運転手のその声を聞いて、私たちは窓に張り付き外を眺める。
そこは私が想像としていた“ 山の中 ”とは大きく違い
街があり、たくさんのストアやレストランが並んでいた。


なんだ、てっきり私は本当に木に囲まれた中で暮らしているのかと…


偏見すみません、と心の中でダリルに謝罪する。
そしてここがダリルが育った所なんだな〜…と興味津々で辺りを観察する。




「結構いい所なんだね、ここ」



ね!そうダリルに答えを求め、振り返ると
彼は「そうでもないよ…田舎だし」とつまらなそうに答えた。

そういえば彼から家以外の話はなにも聞いていなかった。
彼は学校ではどんな子なのだろう?学校が終わった後は?友達は?

そんな事を考えていると、運転手の『着きました!』という声に
考えを遮られて中断する。


彼の事は一度、家に無事に送り届け、
その後で会えた時にでも聞いてみよう…



私は運転手から私たちと出会った時の記憶を消して
服従の呪文を解除した。




「あれ…なんだここは??俺は一体…」




記憶が抜けた男はキョロキョロと辺りを見渡して
自分が何をしていたのか必死に思い出そうと頭を悩ませる。

横にいる私達を見て男は「はて…?」と不思議そうな顔をした




「おじさま、どうかしましたか?」



「いや、えっと…君たちは??」




やだ、おじさまったらとぼけちゃって面白い!と
わざとらしくクレハは笑う




「迷子の私達を親切に家まで送り届けてくださったのではないですか
もう忘れてしまわれましたか?」



これくらいしか、お礼はできませんが…と
クレハは金貨を一枚差し出した。
これはマグルの世界では使用できないものだが、本物の金でできているので
売ればお金にはなるはずだ。




「こ、これは本物か???」



「えぇ、噛んで確かめてみてはいかがでしょう?」




男は疑いの目を向けながらも慎重に金貨を口元へ持っていくと
遠慮がちに歯で噛みつき、跡が残るかどうか確認している
歯型がしっかり残ったのか「こりゃあ、本物だ!」と嬉しそうに小躍りしている。




「それでご家族になにかプレゼントでも買って差し上げてください」




「あぁ、ありがとうお嬢ちゃんたち!」




「いいえ、こちらこそ、ありがとうございました」




私はダリルと共に頭を下げて再度お礼をすると
男は上機嫌でその場を後にした…
車が視界から見えなくなるまで見送ると、ダリルが突然口を開いた。




「クレハって…
なんだかたまに立ち振る舞いがお嬢様みたいだ」




たまに、たまーにね、と指で“ ちょっと “を表現しながら発言するダリルに
私は思いっきり肘で小突いてやると
ヒョロヒョロのダリルは体制を崩してよろめいた。




「なぁ〜にがたまに、よ。
私はこれでも名の知れた家の娘なのよ?」



出会った時からお嬢様だっつうの〜とダリルをデコピンすれば
え〜?本当に?と額を摩りながら彼はまだ疑う。


じゃあダンスでも踊る?


とお辞儀をしてダリルに手を差し出せば
僕踊れないから…と断られてしまった。


そんな彼に私はムキになって踊ろうよ!と腕を引くが
恥ずかしいからヤダ!とダリルは暴れて逃げ出す。


そのまま踊る〜踊らないで少しの間二人で一悶着起こしていると
気付かない間に傍に誰かがいたらしく後ろから声が掛った。




「おい、お前…もしかしてダリルか?」




声の主を確かめようと後ろを振り向くと、
そこにはどこかダリルに似た雰囲気を持つ
しかしダリルよりは幾分かヤンチャ顔の少年が立っていた。

その人物は明らか未成年にも関わらず煙草をふかしていて
できればなるべく関わりたくないジャンルの人種である。


てか…

可愛いダリルをお前扱いして、誰だこいt「お兄ちゃん!!!!」



会いたかった!とダリルは少年に駆け寄り
勢いよく、抱き着いた。

「な、なんだよ、張り付くなよ」と彼はダリルをペリッと引き離し
残念がるダリルに「よく戻ったな」と雑に頭をクシャクシャと撫でまわす。






…なんと





どうやら彼はダリルのお兄様だったようです。









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