dream


□魔女と少年
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あれから私とダリルは軽く自己紹介をして
お互い迷子ということがわかり、すぐに仲良くなった。


私の学校での話や魔法の話などに彼は随分と興味を持ってくれた様で
食いついてずっと熱心に聞いてくれた。
それが嬉しくてつい、私は悪戯の武勇伝を沢山語ってしまったら今度は若干引かれてしまった。


その後夏休暇の事や、両親が亡くなったこと
両親によってここに飛ばされたことなどを話した。


ダリルは「辛かったね、クレハ…」と
軽く背中を撫でてくれて
私は5歳も年下の子の前で不覚にも泣きそうになった。


次にダリルの身の上話などを聞いて
なぜ彼があんな所に居たのか私は状況を把握しようとしていた。
彼が帰れるようにできれば協力してあげたい。


話を聞く限り、彼の家庭はかなり荒れているようだった。



父も母も重度のアル中、そして母親はそれに加えチェーンスモーカーだという。



彼はまだ10歳らしいが、見た目は平均的な10歳にしては身も細く、少し小さく感じた。

家では放置されいたらしく、まともにご飯も食べさせてもらっていなかったのだろう…



彼が今回この山の中にいたのも
(ダリルにここは森ではなく山と教えてもらった)

父親にキャンプだと連れてこられたが気づいたら父親の姿は消えていて
そのまま置き去りにされたらしい。


どんな親だよ、ゴリラですらそんな事しねーよ。



彼には言わないが、多分
子供を邪魔に思った親がわざと仕掛けたに違いない。本当に信じられない。



私はリュックにしまっていた小さなクッションを魔法で大きくし、ダリルに手渡すとありがとう!と彼はペコリと頭をさげた。



そんなクソみたいな親でも子は育つモノなんだね…



ダリルの頭を撫でようと手を伸ばしたら
彼は一瞬ビクッとして目を瞑った。


まさか…この子、親に殴られてる…??



「大丈夫だよ、私はダリルの友達でしょ?」




殴ったりしないよ…と優しく彼の頭を撫でた。

猫のように目を細めるダリルがとてもかわゆい。


スリスリしたい…


スリスリしたいいぃぃ…



そんな下心を持ちながら可愛いダリルを凝視していると、
何かを感じ取ったのか


も、もう…大丈夫だよ?と彼にナデナデを止められてしまった。ちぇ


ここで嫌われてしまっては私のズタボロの心には更にヒビが入りそうなので
名誉挽回として、食べ物と飲み物で彼の心を鷲掴みすることにした。



「そうだ、ダリルお茶でも飲む?」



まだ麦茶のパックで色だししたばかりだから
少し薄いかもしれないけど〜とそれを差し出せば
ダリルは不思議そうにコップの中身を見つめる。



「これ…なんか茶色いけど飲めるの…???」



「あれ、もしかして東洋のお茶は初めて?」



こっちでいう紅茶みたいなもんだよ、甘くはないけどね。と説明してあげると
先ほどまで大人しくしていたダリルとは別人のように勢いよくグビグビと溢しながら
一気に飲み干し、プハー!!!とコップを勢いよく下に置いた。


その姿はまるで仕事上がりに新橋で飲んでるサラリーマンのようだ。




「そ、そんなに美味しかったかな…?」




そう驚きながら聞く私にブンブンと頭を勢いよく横に振るダリル



え、美味しくないの!?まずいの!?



あれか…まずい青汁を一気に飲むみたいなやつか…と私はズ〜ン…と落ち込む。

私は飲み物の中では麦茶が一番好きなのだけど…




「ごめん…そうじゃなくて、違うんだ…

僕、何か飲むの2日ぶりで…」




食べ物も、もう4日は口にしていない、という
彼に私は衝撃を受けた。




「え、ちょっと待ってよダリル。

アナタ一体何日前にお父さんに置いてかれたの!?」



「…6日前くらい。」




てっきり置いてかれたのは昨日今日の話だと思っていた私は驚いて開いた口が塞がらない。


だって…こんな10歳の子供が6日間も一人で!?


信じられない、親は本当に何してんの!?




ちなみに、私が居たこの2日間
捜索している人がいた形跡も、ヘリの音も何も聞こえなかった。


きっとダリルの親は捜索願いすら出していないのだろう…信じられない。



私は彼が4日も食べ物を口にしていないと聞いて
急いでリュックの中を漁る



「待ってて!今なにか食べるものあげるから!」



食べるものがあるの!?ダリルはキラキラとした目をして私の背中越しに覗いてきた。


私は食べれそうなものを片っ端から取り出すが、どれも空っぽの胃袋にはドギツい甘いお菓子ばかりだった。


とりあえず中でも一番まともでお腹に溜まりそうなカボチャパイをダリルに手渡した。



「ごめんね、取りあえずはこれでしのいで」



「ありがとう!」



よっぽどお腹が空いていたのか、彼は私の手からカボチャパイを少し乱暴に奪い取ると、
勢いよく食べ始め、リスのように口いっぱいに押し込んだ。


かわいそうに…お腹すいてたんだね。


私は魔法界のお菓子、激辛ペッパーを口にして
耳から煙を出しながらダリルを眺めている。


そんな私の視線に気づいたのか
ダリルと目が合ったので、微笑みながら耳から煙を出してみた

するとその姿を見てツボッたらしいダリルが噴出して
テントの中がカボチャパイだらけになった。


その惨劇を見て、一瞬固まったものの
二人で転げながらお腹が痛くなるまで沢山笑った。






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