dream


□紡がれた始めた糸
1ページ/3ページ





ここはどこだろう…


周りは辺り一面真っ白で何もない。


しかし、目の前にはニコニコ笑う両親と
赤い風船を持ってはしゃいでいる小さな私がいた。

なんだか懐かしい。5才くらいだろうか?


私が私を見ている


不思議、こんな夢見たことない…




すると突然、楽しそうに前を歩く両親の足が止まった。

急に立ち止まる両親にそのまま顔面から突っ込んでぶつかり
イタタ…と鼻を押さえながら
私はきょとん…とした顔つきで両親を見上げる。



おとーさん、おかーさんどうしたの?
おうちかえらないの?



その幼い私の言葉に振り返った両親は
悲しそうに愛しそうに、少女の頭をゆっくり撫でる。




クレハ…


クレハ…愛してるわよ…


ずっと…お前のそばにいて
見守っているよ…


だから、寂しくないからね…



そういい終わると、両親はスゥーッ…と
どんどん遠くへ行ってしまう。




まって、まってよ、おとーさん!おかーさん!


どこにいくの!おいていかないで!



幼い私は小さな足で必死に追いかけるも
追いつけるはずもなく、躓き、転んでしまった。



おいてかないでーーーーー!!!!




やだああああああああ!!!!!!




泣きじゃくる小さな私を見て私もつられて涙を流すが、溢れ出して止まらない…

あれ、なんでだろ

涙がどんどん流れて止まらない…



待って…私…



さっきまで・・・・!!











「…行かないで!お父さん、お母さん!!!」





バッ!と勢いよく起き上がった瞬間
身体中を激しい痛みが襲い、立ち上がろうとした体はそのまま地に伏せる形となった

うっ、と堪えていると今度はめまいと吐き気が一度にどっと込み上げてきて
我慢できずに身体が望むままに私はそれを吐き出した。


うっぇ…気持ち悪い…


ゲホゲホと咳き込み、再び込み上げる気持ち悪さに起き上がることはできずその場に蹲るも
足元に転がっている石や枝が体にあたり
身体の更なる痛みにクレハは悲鳴をあげる


…もう…やだ……


杖で癒しの魔法を使おうと服のポケットを弄るもあるはずの杖はそこから姿を消していた。
うそでしょ。


「そんな…杖がなきゃどうしろっていうのよ!」


クレハは傍にあった石を握りしめて
近くに佇む木に思いっきり投げつけ八つ当たりをした。



それにここ、どこよ…


恐らく、母が渡したあの時計で
どこか他の空間に転送された私。


半べそをかきながら周りを見渡すもそこは
家でも学校でも知っている町でもなければ

周りには沢山の木々が静かに揺れ、緑で溢れる、そこは深い森の中だった。


しかし、禁じられた森のような魔法界にある森ではないようだ。
魔法界の森には魔法生物が沢山潜んでいるため
何かしら生き物が寄って来たり、騒がしかったりするからだ。


ということはマグルの世界にでも飛ばされたのだろうか…?


しかし、探索しようにもこの身体では動けないし、何より心もズタボロで何もする気にはなれなかった…


お母さん、お父さん…


あの時、なぜ杖を取り反撃しなかったの?
二人もいれば余裕だったのに…
なんで私なんか庇って…

わからない…二人がなぜ死ななければいけなかったのか。

そして両親よりも昔から村人と関わっていたケイでさえあっけなく殺された…



あの時の惨劇を考え、思い出すとまた涙がぽろぽろと零れ落ちてきた。


「私…これから一人でどうしたらいいの…?

もう…わかんないよ…」



いっそ、このまま何もせず死んでしまおうか…


クレハは仰向けに寝そべり大の字で転がる。

このまま肉食動物でも死神でもヴォルデモートの地縛霊でも私を喰らいにくればいい。

そう考えた時だった。
絶望に押し潰され、泣きじゃくり小さくなる私の目の前にボゥッ…と淡い光が現れた。


それは鶴と鷲の形をした守護霊だった…

この二つの守護霊には見覚えがある
私が一番よく知っていて、今一番会いたい人の…



「お母さん!!お父さん!!!」



そう、鶴は母の
鷲は父の守護霊だったのだ。


痛む身体に鞭を打ち無理やり立たせると
私はどこかに両親も一緒に来ているのではないかと足を引きずりながら必死に探す

が、どれだけ探しても見つからない…

どうして…??


私が振り返り、二匹の守護霊を見つめると
二匹は必死に何かを突いている。

なんだろ…

地面に転がっている沢山の葉や枝を手で掻き分けていくと、そこには私に馴染みのある物が顔を出した。

それは私の杖だった。


「…!!

こんなところに!!!」


私が良かったァ…と杖を握りしめると
目の前で私を見つめる二匹の守護霊はただ一言


《…生きなさい。》


それだけ私に伝えて消えてしまった。



…そっか。

やっぱりもう、お母さんとお父さんはいないんだね

頬に伝った涙を私は乱暴にゴシゴシと袖で拭う。

そうだよね。
最後に両親が守ってくれたこの命
なんとしてでも守り抜かないと、両親の死は無駄になる。
そんな事には絶対させてはいけない。


なんとか一人でも生き抜かなきゃ…


そう決意して私は頬をパンパン!と叩いて目を覚まさせると
杖を取り出し、自身の身体に当て呪文を唱える


《ヴァルネラ・サネントゥール 》


すると身体の痛みは徐々に和らぎ
恐らくヒビが入っていて腫れ上がっていただろう足も次第に回復していく
まだ少し痛みは残るものの…うん、これなら歩ける。



生きなきゃ、私は生きなきゃ…!!



私は転送された際に散らばったらしいリュックの中身を必死でかき集め、木に引っ掛かっていたリュックを魔法で手元に引き寄せた。

あの時、リュックを念のために持ち出しておいて良かった。

ここには小さいテントも寝袋も食料も水も入っている
最低でも一週間は余裕で持ち堪えることができるだろう。


私はまずここがどこなのかを調べるため
ただ、ひたすら前を見つめて何も考えずに
出口を求めて歩き出した。








次へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ