dream


□終わりとはじまり
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車に乗り込む事2時間…


そこには日本では見られないであろう
自然の景色が見渡す限り広がっていた

最初は疲れた〜とだれていたクレハだったが


「すごい!お母さん見て!シマウマ!ゾウもいる!!!!」


あっ!キリンも!よくわかんない牛みたいのも!!!

すごい!!アニ●ルプラネットみたい!



と、まるで小学生のように大興奮だった。




「あなたにこの景色を見せたかったのよ」


「一度は来てみるもんだろ?」



はしゃぐ娘を見て両親は満足そうに微笑んだ
やっぱり連れてきて正解ね、なんて二人は喜ぶ


クレハは飽きることなくずっと窓に食いついていたがケイのある言葉でそれも終わる



『よし、もうそろそろかな

いよいよウンパカパンバカス村に着くぞ〜』



いや、だからなんなのそのふざけた名前は…


その名前を再び聞いて不安しかねぇ…
とため息を吐いていると車が停止した。



車から降りると木で器用に作られた門があり

ケイが門の向こう側に何かを投げた。

それを合図にしてか、門が少しずつ開いていく


「この門はね、去年お父さんと私が一緒に作ったのよ」


はえ〜…と門をただ見つめて立ち尽くしていた私に母がこの門ができた事の経緯を教えてくれた。



「一昨年ね、他の部族から襲撃を受けたらしいの
それはもう酷かったわ・・・
女性も子供もお構いなしに乱暴されたわ」


せっかく作った井戸も破壊されたのよ。


と当時の事を思い出したのか手は強く握しめられ
母の顔からは笑顔が消えた。



「だから私たちは昔の製法になってしまうけどこの門の作り方を彼らに教えて一緒に作ったの」


大変だったわ…


母はじっと目の前の門を見つめる


そんなことがあったとは知らない私は
去年家で両親の留守中ひたすら家で漫画読んでアニメみてゴロゴロしていた自分をなんだか情けなく思う


私も今回役に立てるかな…


そんな事を考えていると門は完全に開き
中から村の戦士が現れ両親に挨拶をした。



「さぁ、クレハ村長に挨拶にいくわよ」


久しぶりの緊張感に私はつい子供のように

母の手を握りしめた。





門をくぐるとそこには

私が想像していたよりかは遥かに綺麗な村が広がっていた。


想像通りの藁でできた場所もあるが
これも両親が一緒に作ったのか、まるでログハウスのような木で作られた家もあった。


ちなみに私たちは今回ここに泊まるらしい



うっしゃ!



もう一つあったログハウスはどうやら村長がいるらしく、私たちはその家に案内された。



そこには


大きな羽冠をつけて槍を持つ裸の長老…


という私の想像を裏切り
普通にTシャツを着こなす村長がいた。

しかもなんともセンスのない日本語の【湘南】と書かれたシャツで笑いそうになったのを必死に堪える。



『やぁ、スカーレット夫妻、そしてその娘クレハ

遠いところようこそ、我が村へ』


と握手を求め私たちもそれに応える。
近くにいた女性たちが手作りの首飾りを掛けてくれた。
なんだかハワイみたいな接待である。


村長が近くにいた村の者に


『アレをただちに用意せよ』


というもんだから私は身を固くした。


村長が言うアレ…

恐らくそれは
【世界の果てまでいってYO!】というテレビ番組で見たあの飲み物だあろう…


割とどこの先住民族でも出されるだろう

歓迎の祝いの酒。


手作りのその酒は見た目がとにかく…うん。


そして味も吐き出すのを必死で堪えるほどらしい。

でも歓迎の酒なので目の前で出したら失礼にあたるためしっかり飲まないといけないのだ。



ひぃ〜…と思いつつ
あ、でも私はまだ未成年だからオッケーかな?
なんて考えているとソレが目の前に現れた。

うわぁ〜・・・

思っていたよりもかなり茶色で…


「いい香り…」



…?ん…?いい香り…?


クンクンと差し出されたそれのニオイを嗅ぐと
チョコレートのような香りがした


『よくわかったな、これはカカオでできた飲み物だよ』


チョコレートのような立派なものではないがね…

と村長もソレをズズッと口にする。


てっきり変な怪しいお酒が出てくると思っていた私は予想外な物に驚き
固まっていると『君には苦いかな?』と村長が砂糖を出してきてくれた。


こ、こんなところに砂糖…!?


もう二度三度驚きでいっぱいだ。
頭がクラクラする。


その隣では父が


「殿〜貢物でございまする〜」


なんてふざけながら東京バナナーンを差し出す


『おぉ!お主も悪よのぅ〜

セップクジャーセップクジャー』


と意味はわかっていないのか
村長もノリノリになる



アハハハハッとその場は明るくなり


私は肩の力が抜ける。




なんか私…


無駄に余計な心配ばかりしていたかもしれない…










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