dream


□真夏のスイカボンバー
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真夏の午前6時30分…




ミーンミンミンミー



ミーンミーン…



外からはパートナーを求めて、
必死に独自の歌を披露する演奏者で溢れている

閉めたはずの窓からは、誰にも負けまいと互いに競い合う、
男達の灼熱の終わらないコーラスの戦いが繰り広げられていた。



ミーンミ…ミー!

ミーンミンンミン・・・・ミ…

ミンミ…ミ、ジジジジッ!!!!




「下手くそか!!!!」



一人で虫にツッコミながら
ピンッと網戸に張り付いたセミを指ではじき
音痴な小さな演奏者をスーテジ会場からおろすクレハ


せっかくの夏休暇だというのに
こんなヘタッピな歌で起こされたらたまったもんじゃない
と、窓を閉じ、クレハは少し乱暴にカーテンを閉めて窓を塞いだ。


ジジジッと抗議の声が聞こえた気がしたが

聞こえなかったことにする。




「やだ…クレハったら、かわいそうじゃないの」


彼らは寿命が短い中精一杯がんばってるのよ。


日本にある我が家に泊まりに来ていた友人のルシールが

『無慈悲ね…』なんていいながら

お客様用の布団の片付けに勤しむ



「だってせっかくの夏休暇だよ〜?」


最低でも10時まで寝たいじゃ〜んと欠伸をしながらルシール布団の片づけを手伝う。




夏休暇が始まり、はや一週間ちょい

それはもうあっという間だった。


食べて寝て、スマホのアプリを少しいじったくらいでまだ何もしていなく
体感では夏休暇はじまってまだ二日という感じだ。
まじでやることねぇ…


そんな時間を無駄にしまくってる暇人の私に少し前に一通のメールが届いた。


休暇前にアドレス交換をしたルシールからだった。



【クレハ、元気にやってる?

せっかくの夏休暇だし〜とか言って
まさかだらけてないわよね?

私はいつでもお見通しよ:)

ちなみにこっちは今課題の三分の一を終わらせたところ♪
クレハの報告も楽しみにしてるわね。 】



と、初っ端からクレハの私生活を見透かされたメールが届いて鳥肌がたった。

まさか外に…?とカーテンを開いてみるも
セミが網戸に張り付いているだけだった。


その後はルシールに


【まさか♪こちらも課題は順調デス!】


と罪悪感を少し感じながらも
嘘ぶっこいてクネクネ動くキモいクマのスタンプ付きでメールを送れば



【そっか、それなら心配はご無用ね

実は私の両親は仕事が忙しくて
暫く家にいないの、家に一人だから、寂しくなったら通話してもいいかな?】



と、がっかり項垂れる可愛いポメラニアンのスタンプ付きで返事が来たのだった。


普段私のスマホには一通もメールがこないクレハを心配していた両親が


『友達からメールが来ている!』


と、横で大興奮しながら私のスマホを盗み見る
見られまいと必死で手で覆い隠すも
すでにルシールの一人で寂しいにゃんメールを見てしまった両親は


『まぁ、女の子一人で可哀想だわ!!』


危ないから今すぐうちに呼びなさい!!


と大騒ぎしていた。

四六時中世界に飛んで私を放置してた親が何いうとんねん。


そんな騒がしいながらも有言実行タイプの両親は、

すぐにイギリスから日本へ来る為の飛行機の往復分チケットを取り寄せ

梟お急ぎ便(Am●zonに対抗して作られた)にて
ルシールに送るのであった。



そうしてなんだかんだこんな感じでルシールは二日ほど前に
我が家に遊びに来たのだ。



音痴君によって起こされた私たちは
まだふかふかの布団で包まれていたい気持ちがもあったが、
目が冴えてしまい眠れないので
これからの日程の打ち合わせをすることにした。



「ん〜まだ7時前だね。どする?」


何かしたいことある?


とルシールに尋ねると

う〜ん…と腕を組ませながら眉間にシワを寄せて考える。


「そうね…、
ここに来たときはクレハのご両親が空港から
車でお迎えしてくれてこの辺をじっくり見てないし、お散歩してみたいわ!」


あと、クレハが前に教えてくれた
スイカそっくりのアイスが食べたい!


と目をきらきらさせるルシールを見て

眠たい顔を思いっきりパンパンッ!と叩き


「おし!おっちゃんが連れてっちゃる!」


気合を入れて

私はコンビニに寄りつつ

近所の公園をお散歩がてらエスコートすることにした。





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