dream


□英雄と牡鹿
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「でもルシール、なんで私の為に…?」
 


少なくともこの禁書の棚に指定された本は
そう簡単には貸出することはできない

どうにか先生に もっともそれらしい 

必要な理由を話し、納得させたうえで

許可書にサインをしてもらわなければ借りることはできない。



特にこれに関してはマクゴナガル先生が目を光らせていたから
(主に私のせいだけど)

いくら笑顔でみんなを虜にするルシールでさえ
笑顔だけで許可を貰うなんて到底無理だろう。


いっちゃ悪いがここ最近のルシールは調子が悪いのか
成績は中の下だった。


トップを争う成績の私ですら敵わないのに

説得をするのは難しかっただろう。



と、色々疑問を考察しながらも
興奮しながら本を読み進める私を横に
嬉しそうにニコニコしながら見つめるルシールが
照れくさそうに口を開いた。




「私ね、
ずっとクレハにお礼がしたかったの。

二年生の時にいじめられていた私を助けてくれただけでなく
あれから寮も違うのにずっと一緒にいてくれたでしょう?」




本当に嬉しかったの…

ありがとう… 



と頬を赤く染めながらルシールは私の手をにぎりニコッと笑う。


それはもう何年も前のことなのにまるで
今さっき助けてもらったことのように話すルシールに
むずかゆいなんともいえない気持がこみ上げる。
なんだかとっても気恥ずかしい。



その時のきっかけは

私がただ、スコーピウスのおでこにふざけて『ルーモス』をして

こっぴどく怒られ絶交宣言をされたショックと苛立ちを

たまたま居合わせたルシールを侮辱していた女学生達にぶつけ

身体中にクソ爆弾を浴びさせただけだった。


その後なんだかんだでそれがきっかけでルシールとは仲良くなり、
親友までに昇格したのだった。





「だからずっとお礼に何かしてあげたいと思って
クレハの夢を聞いた時、これだ!と思ったの。
マクゴナガル先生に特別に変身術の個別授業をお願いして
アニメーガスについて色々勉強していたのよ」




そうしてルシールがこの本を手に入れた経由を詳しく教えてくれた


彼女は私の夢の為に態々進んで
マクゴナガル先生へ アニメーガスへの愛やら
先生のすばらしさを熱弁し猛アピール、そして仲良くなったところで




『私…先生のような偉大な魔法使いになりたいです…
先生に近づく、その為にもアニメーガスを習得したいのです!』



とまぁ、マクゴナガル先生が喜びそうな言葉を並べて丸め込み
放課後、ワンツーマンで特別授業を受けられるまでになったとか。


最近、アニメーガスの禁書の本を狙う私について先生が愚痴をこぼすも



『先生違うんです…
優しい彼女は親友の私の為に力になりたいとあんなことを…
いつか先生に認められたら、その時でいいの、と彼女には話したのですが…』



私のせいなんです…ごめんなさい…


とルシールが話すと先生は涙ぐみ、


あぁ、私はなんてことをしたのでしょう…!
申し訳ないことをしてしまったわ…と頭をかかえたという。



『ミススカーレットがそんな友達思いの子とは知らず…

あの子ときたら、なんと服を脱ぎだしたり靴まで舐めてきたのですよ!

どうしてここまでするのかと思えばあなたの為だったのですね…』



と、私がそんなことをしていたとは知らないルシールは

靴を全力で舐める私を想像して つい噴出したという。



元々ルシールの呑み込みの早さに気を良くしていた先生は
今の友情物語を聞いて更に気持ちが高ぶったのか




『これは私から、頑張ったあなた方へのほんのご褒美です
よく学び、賢く使いなさい。
夢を夢で終わらせてはいけませんよ』




と許可書のサインをくれたのだとか


ニコニコとピースサインをしながら話すルシールだが

私はいつも優しく嘘をつくような子ではないルシールが

こんな演技派女優だと知ってしまったことに鳥肌がたった。

ヤバイ、この子絶対ハリウッド行くわ…



そしてなにより、私に対し勘違いをしたと思っている先生にも
申し訳なく思ってしまった。


先生すみません…
あの時実は全力で自分の為に靴を舐めていましたごめんなさい


そして恐らく、ここ最近ルシールの成績が下がっていたのも
私の為に色々としてくれたからだろう。

なんだかうれしい気持ちを通り越して本当に申し訳なくなってきてしまった…




「ありがとうルシール…これでもう仕上げにかかれそうだよ!」



「ふふっどういたしまして。

ちなみに私も自分の成績が落ち着いたら
せっかく先生が教えてくれたし

一緒にアニメーガス…目指してもいいかな…?」




「もちのろんだよ!
ちなみにルシールはなんのアニメーガス目指すの??」




「う〜ん…そうだな…

どうせなら可愛いのがいいかな…



   …ポメラニアンとか??」






そのまんまですやん。









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