沖 田 総 悟

□ハ ル ジ オ ン が 咲 く 頃 に
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何の変哲もない毎日。



季節は3月もまわって、4月になろうとしていた。相変わらず、近藤さんは姐さんのとこに飽きもせず通い、土方は生き続けている。冬も終わり、浪士達が活発になるかと思いきや桂や高杉ですら大人しい。下っ端の浪士ですら何も起こさねえ。平和だと言われれば聞こえは良いが、俺にとっちゃ何でもねえ。


土方を抹殺しようにも何故か最近面白くねえ。今日も土方を目覚めさせてやろうと思って、さっきバズーカで土方の部屋ごと起こしてやった。総悟ォォォォォォォ!!!!と感謝する声が遠くから俺の耳に届く。また、死ななかったことにも何も思わなくなっちまったんでさァ。






「よォ、総一郎くん」







「旦那、総悟でさァ」









さっき山崎から奪った風船ガムを噛みながら、屯所を出て頭に両腕を廻しながら俺は歩いていた。春ってのはどーも眠くなって仕方がねえ。屯所じゃ口うるせえ土方が居て休まるもんも休まらねえ。俺は今日の昼寝をする場所を探していた。すると万事屋の旦那と偶然にも遭遇した。あれ?そうだっけ、と裏声で言ってくるが、珍しくイラッともしなかった。俺の名前を覚える気もねえであろう旦那の左手には名前なんて知らない花がピンクの紙で包まれて、赤いリボンで綺麗に包装された花束が握られていた。










「…あれ?旦那、その花どうするんでィ」








「あ?…これか」









俺が花束について言うと旦那は右手を後頭部にあてガシガシと頭をかいた。旦那に、そういう相手が出来るわけがねえし、何か面白そうな匂いがした俺は旦那の返事を待った。歯切れが悪そうに、何かが言いにくいのか旦那は一向に話そうとしない。少し頬がピンクがかっていて気色が悪い旦那を隊服のポケットから出した携帯でカシャッと写真に収めた。








「ちょ、おい、てめえ…何撮ってやがる…!」








「あまりに旦那がキモかったんで、つい」








「つい、じゃねえだろーが!!!!!!」









消せ、と騒ぐ旦那に写真をだしに使って、やっとこさ花束の理由を聞くことができた。あまりにモジモジと話してるのが気持ち悪いんで割愛させていただきやす。旦那が言うには、うちの屯所の近くにある花屋のアルバイトの女が可愛いんだと。それで旦那は遠くから、その女を見ていたら声をかけられ必要でもねえ花束を買っちまってパフェが食べられなくなったらしい。








「知ってる〜?総一郎くん。花って結構高いんだぜ?今日勝った分、ぜーんぶ無くなっちまった!」







ねえ、聞いてる!?と叫ぶ旦那を置いて俺はその花屋とやらに近くだというから暇つぶしに歩き出した。そういえば最近隊士達が花屋がどうとか言っていたことを思い出した。皆やりたがらねえ見廻りも最近は立候補が多すぎて俺には周ってこなくなった。どいつもこいつも女が何だっていうんでさァ、とまるで土方のような思考になった。とりあえず、土方死ね。そして俺は、通りすがりのおばちゃんに挨拶をされ、適当に会釈する。どうやら、今日の俺はいつもと違うようだねィ。









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