居場所は音楽の中

□宮廷音楽家
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サマルトリアのお城では、第一王女のステラ王女の誕生を祝った宴が催されていました。

城の大広間に、沢山の貴族達。
そして彼らは、愛らしい生まれたばかりの王女を見て、国王夫妻と6つほどのクッキー王子と話し、祝いの品を納めていきます。

その貴族の中には、ローレシア王家、ムーンブルク王家の姿もありました。
ローレシアのロラン王子、ムーンブルクのプリン王女は二人共クッキー王子と年が同じで、おとな達がつまらない話をしている間は3人で広間のすみで楽しく遊んで過ごしました。
彼らは過去にも2回ほど会ったことがあったのです。

そこへ、サマルトリア国王がやって来ました。
「子供たち、ほら、音楽家が来たぞ」
広間の中央の方には、その音楽家“達”が立っていました。
3人の音楽家でした。
「あら、見てごらんなさいよ。私たちと同じくらいの女の子がいるわ」
プリンは音楽家達の方を指差しました。
「ほんとだ…」
「あの子も楽器ができるのかな…」
クッキーがそうつぶやくと、すぐにプリンは言いました。
「あらクッキー、私だってピアノくらい弾けてよ」
ロランは静かに言います。
「王女はピアノ習うんだろ、必ず」
「うるさいわね!そんなこと言ったら、音楽家の娘が楽器できるのも当然の話だわ!」
プリンはまだ幼いですが、王女としてのプライドをかなりもっていたのです。
だから少し頬を膨らませて言ったのですが、そんな気分は演奏の終了と共に消えることになるのです。

クッキーは国王夫妻に促され、玉座の隣の自席で演奏を楽しむことになりました。

音楽家は男が一人、女が一人、そしてあの女の子という構成でした。
おそらく親子なのだろうと、各王家の子供たちも感じました。
おとな達が一礼するのを見た女の子は、慌てて自分もお辞儀をしました。

親子はここにいる貴族達よりも質素ではありましたが、上質な絹の服をまとっていました。
女の子は薄い水色の可愛らしいドレスを着て、艶のある髪には同じ色のリボンが上品に巻かれていました。

手には小さなヴァイオリン。

男はチェロ、女はヴィオラを構えました。
美しい弦楽器の音が響きました。
女の子のヴァイオリンの音は、あまり大きくはありませんでしたが、素晴らしく落ち着きのある、凛とした音色でした。

プリンは、やっぱり教養のために習っただけの私のピアノがかなうはずもなかったな、と感じました。



演奏が終わり、3人はまた頭を下げました。
そのあと、サマルトリア国王はにこにこ笑いながら言いました。

「その娘をここへ」

女の子は、いくらか驚いたあと、楽器を母親に預けて玉座の方へ歩きはじめました。

「わっ!」

突然、女の子は転びました。
母親は慌てて言いました。
「も、申し訳ありません!このようなドレスを着慣れていないもので…」

「大丈夫ですか!?」
そう言ってパタパタと走ってきたのは
クッキー王子でした。
彼は女の子に手を差し出しました。
女の子は恐る恐る手を取って、立ち上がりました。
「ありがとう……ございます」
彼女はあまり敬語を使ったことがなく、相手が王子だということを思い出すと慌てて「ございます」を付けたしました。
クッキーはニッコリ笑いました。


「えっと………ジャレットと、もうします」
国王の前で、彼女はゆっくり言いました。
国王は優しく言います。
「息子のクッキーと同じ年頃でここまでの演奏ができるとは、感動したぞ」
「ありがとう、ございます」
さっきよりも流暢にお礼を言い、頭を下げます。

国王は、今度はクッキーの方を向いて言いました。
「ところで、彼らは今日から宮廷音楽家として住んでもらうことになっているんだが、知っていたか?」

「えっ!?」

王子は驚きの声をあげました。
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