こっそり政宗様BDCD2019

□150 桜の季節をあなたと
1ページ/1ページ

   
「桜、満開ですね」

「……ああ、そうだな……」

柔らかな日差しの中、縁側から外に出て庭先の桜を政宗様と眺める

お弁当も甘味もないけれど、忙しい政務の合間にこうして二人きりで過ごせるだけで幸せだと、心から思う

「………ん?」

ふわりと風が吹いて優しい花吹雪が舞う中、政宗様の肩にぽとりと桜の花が落ちた

「あ、花ごと落ちて来ちゃいましたね。地に落ちる事なく手にされた方は、桜に祝福されているそうですよ」

桜を手に取る政宗様を見ながら、ふと昔聞いた話を思い出す
綺麗な桜に手を伸ばす者が減るよう、近所のお爺さんが子どもたちに優しく諭してくれていた


「そうなのか……では……」

「え……」

手を伸ばされて、そっとその桜を髪に挿される

驚いて政宗様を見つめれば、ふと柔らかく微笑まれた

「……可愛いな、良く似合う」

「っ………ありがとう…ございます……」

顔が火照っていくのが分かるくらい照れてしまう


「……桜からの祝福、か……」

私が落ち着けずに視線を彷徨わせている中、そっとつぶやきながら桜に視線を戻された横顔は、なぜかどこか儚く見えて

「政宗様……?」

何を想うよりも、その手を両の手で包み込んだ

「………ん?どうした?」

再び振り向かれたお顔は、いつもの穏やかな微笑み

「いえ………」

本当はもっと、寄り添いたい

何を想ったのか、聞かせてほしい

それでも、今私に下さったのがその優しさなら……


「……来年も、こうして政宗様と桜が見たいです」

「ああ、そうだな……また来年も、二人で見よう」

しっかりと握り返されたこの手が離れることのないように

次の桜の季節まで、寄り添う距離を二人で縮めていけたらと……

飾られた祝福に、そっと触れて願いを込めた

      
次の章へ
前の章へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ