祝辞綴り

□無意味の先の意味
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「おい、何処まで行く気だ」

「んー、まぁあとちょっとかなー」

「任務の確認だと言っただろう。どうしてこんな所まで……」

「まぁまぁ、たまにはいーじゃん。ほら、見えてきたぜ」

「あれは………」





「遅いぞ弦夜!!あ、そっちが弟か?」

「こいつ連れてくるの大変だって言ったろー?」

「弦、これは一体……」

「ちょっと待ってなー。成実、まだ駄目なんだろ?」

「いや、そろそろ大丈夫なはずだ。朔夜も一緒に来てくれるか」

「おいっ………」

「いーからいーから」

「……………ここは?」

「俺の主の専用離れ」

「いいかー?!開けるぞー!!せーっの!!」




「弦夜さん!朔夜さん!お誕生日おめでとうございますっ!!」



「なっ……………」

「ありがとなー。てか美味そうな匂いしてんじゃん、豪華だなー」

「当たり前だ、誰がご用意したと思っている」

「お、政宗が作ってくれたのか?」

「いや……二人で拵えた。今日はゆっくり楽しんでくれ」

「おい弦………」

「ほら、俺ら誕生日だろ?せっかくだから二人一緒に祝いたいってさ」

「すみません、双子だとお聞きしたのでぜひ一緒にお祝い出来たらと……尾張から遥々ありがとうございます」

「ほんとになー。報酬弾んでくれよ」

「全く、誰の為の祝いだと思ってるんだ」

「まぁまぁ、せっかくだから早く食おうぜ!」

「……酒は飲めるのか?」

「いや……忍に酒は…………」

「固いこと言うなって、今日くらいはいいだろ?」

「俺はお前と違って尾張に戻らないといけないんだ」

「……無理にとは言わない」

「あ、ほら政宗がっかりしてるだろー?ご当主様の酒なんだから、一杯くらい飲んどけって」

「…………じゃあ、一杯だけ………」

「………付き合わせてすまない」

「いえ……兄が、いつもお世話になってます……」

「弦夜の言う通り、似てるなお前ら」

「やはり朔夜を雇うべきだったか。今からでもどうだ?」

「あ、ひっでー小十郎さん!俺だって頑張ってるだろー?」

「お前が政宗様の影武者だなど、やはり無理がある」

「だから欺くのにいいんだって、雇ってくれたの小十郎さんじゃん」

「お前……雇い主に対してもこの調子なのか」

「ん?まぁなー」

「肩肘張られるより楽しくていいよな!」

「もう少し真面目にやって欲しいものだが………」

「働きぶりは申し分ない。いつも感謝している」

「お、政宗なんだよ照れるじゃん」

「……………そうか、良かったな………」

「ん?なんか言ったか朔」

「なんでもない」

「ふふ、おかわりも沢山あるので召し上がって下さいね」

「んじゃおかわり」

「あ、俺も俺もっ」

「はいっ」





「っあーくったくった」

「成実、昼間から飲みすぎだ」

「今日はめでたいからなっ!!」

「……楽しんでもらえただろうか」

「はい、わざわざご用意頂いてありがとうございます」

「忍は本当は誕生日なんか祝わないんだけどな」

「でもやっぱり、こうして知り合えたお二人が生まれて来てくださったことを感謝したいです」

「まじめだなー。ま、悪い気はしねーけどさ」

「なぁなぁ、弦夜も朔夜も泊まってけよー夜もぱぁっと祝おうぜ!」

「ふふ……成実様、お二人をお祝いしたい方は私達だけではないからこの時間にしたんですよ、お忘れですか?」

「あ、そっか、んじゃまた今度なっ」

「二人共、無理を言ってすまなかったな」

「改めて、おめでとう弦夜、朔夜」

「これからもよろしくお願いします!」

「…ありがとうございます」

「ありがとなー」





「……ところで弦」

「んー?」

「なんで今日だったんだ。誕生日は明日だろう」

「……当日は、一番大事な人と過ごせってさ」

「…………そうか」

「んじゃな、朔。おめでとさん」

「……………弦もな」


   
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