祝辞綴り

□貴方色の金平糖
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「貴様……っ」

「このうつけが!」

「……何をしている、そんなに叩き斬られたいか」



この城では毎日こんな台詞が飛び交うのに、誰もが笑顔を絶やすことなく勤めていて

主に向ける眼差しは、いつだって驚きと尊敬に満ちる

それは以前から変わらぬ光景
けれど近頃、増えたものーー




「信長様、お待たせ致しました」

「遅い」

「お時間頂きますってきちんとお断りしました」

「ふん………さっさと寄越せ」

「はい」

「……………なんだ、今日はいつもと色が違うな」

「紅花から取った紅色の粉を分けて頂いたんです。甘味に混ぜて色付けると綺麗な物に仕上がると聞いて……味に変わりはないのですけど」

「ほう………」

「信長様、いつも赤を御召になってるので、ぴったりだと思ったんです」

「そうか」

「ふふ……信長様の為だけの"秘薬"ですから、前からもっと、何か特別にしたかったんです」

「ふん、貴様が作るのだからそれ以上の物はない。……が、悪くはない」

「………ありがとうございます、信長様」




言葉だけは他のそれと変わらないのに
眼差しも笑顔も声色も、向けられる全てが優しく甘やかで

他では得られぬ幸福を確かにその手に掴んだのだと
二人を見守る家臣達だけが、口には出さず祝福を送る


    
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