奥州ホールディングス資料室

□最優先事項
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『お疲れ様です』

さっきから、何度も打っては消してる文字

これだけでは素っ気ないような、でも、絵文字や顔文字を入れてもいいのか……そもそも、なんだかそれは軽い気がして私が嫌で………


一言でいいからお話がしたい

お忙しい方だから、既読の文字がつくだけでもいい

海外出張の為に、お傍に居られない今日

業務連絡では無くて、ちゃんと、別の…………


ぴこんっ


「っえ!?わっっ!?」

ぐるぐると真剣に頭を悩ませていたばかりに、手の中で震えたスマホに驚いて飛び上がってしまった

終業後の静かなオフィスで一人じたばたとして、誰も見ていないのに赤面してしまう

「……びっくり、した……も、タイミング………っっ………」

画面を見て、もう一度心臓が跳ねる



『from:伊達成実様

おつかれさん!このあと暇なら飯でも行かないか?\(^o^)/』


「………あ……………」

跳ねた鼓動はまだ戻らず、それでも落胆の声を出しそうになって、慌てて口を抑えた

(私、なんて失礼なこと………っ)

身勝手な気持ちを叱咤しつつ、返信を考える

予定は、ない

きっと、私の寂しい気持ちを汲んで下さったのだろうとも思う

(…………でも……)

それでも、頭に浮かぶのは…………







『Masamune Date
お疲れ様。変わりないか?』







「え…………………」


返信に迷っていたメール画面を覆うように表れた通知

絵文字も顔文字もない、シンプルな言葉

それなのに、何を思うよりも先に、画面がうっすらぼやけていく


「……政、宗様……っ」


言いたかった言葉

伝えたい言葉

気を遣いすぎて押し込めていた想いが、一瞬で溢れて止まらなくなる



「ど…しよう…………早く、お返事………っ」

せっかく繋がれた時間を一瞬でも無駄にはしたくないのに、礼儀も欠いてしまいたくなくて




それでも




(……ごめんなさいっ)


どうしても、譲れなくて


『お疲れ様です、政宗様ーー』


   



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成実様からはメール
政宗様からはライン

伝わらなかったらごめんなさい!
   
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