奥州ホールディングス資料室
□Would you wanna go out with me?
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「………政宗様?」
「………いや……いい」
「?」
『お前らいい加減デートくらいしたんだろうな!?』
『で………』
『やっぱりな……あのさ、そりゃあ毎日一緒に仕事してるだろうけど、会えれば何でもいいわけじゃないだろ?』
『………』
『…お前は見たくないのか?』
『…?何をだ』
『オフの時の姫をだよ!!仕事中の真面目さとか緊張とか取っ払ったお前しか見れない緩んだ空気の姫を!!』
『…………』
『……お前ほんと、顔に出るよな』
『うるさい、放っておいてくれ……』
『いいか、姫みたいな子は自分からは絶対に出掛けたいなんて言わない、いや言えない!お前が社長だから尚更な!!』
『……むぅ』
『今度の週末は休みなんだろ?忙しい時だってあるんだから暇な時に出掛けてこい!』
『……』
『何だまだ何かあるのかよ……』
『………れたら……』
『ん?』
『断られたらどうする……』
『………お前乙女か』
『うるさい、もういい』
『っあー!悪かった悪かった!!大丈夫だから!!お前ら付き合ってんだから!!断られたとしても理由があるし!その時は次の約束取り付けるんだよ!!』
『……そうか』
『………お前本当に世界を股にかける会社の社長様かよ……』
成実があんな事を言うから、ここ数日ずっとこんな感じだ。
さすがに姫もおかしいと思っているらしく、目が合う度に答えを求めるように視線をくれるが……俺はまだ言い出せていない。
既に金曜の午後3時。
いつもなら姫の用意した茶菓子で安らぐこの時間が、酷く重く感じる。
「あの……政宗様……」
「ん?……っ」
困った様な、泣き出しそうな。
そんな顔と声が胸を締め付ける。
「私、何かしてしまったのでしょうか……ここ数日、政宗様のご様子が……」
そこまで言ってしゅんと俯いてしまった。
これは、流石に駄目だろう………
「姫」
俯いたままの姫の手をそっと包む。
「すまない。……笑わずに聞いてくれるか」
「……?はい……」
絡んだ視線の先は潤んでいて。
自分の愚かさに溜息が漏れる。
「……明日、どこか出掛けないか」
「…………………え?」
「……これを、言いたかったんだ………」
真っ直ぐきょとんと見つめてくる瞳を見ていられなくて、今度はこちらが目を逸らした。
数拍の間。
「あ、の………」
「ん………?」
「………お出掛け、したいです……政宗様と……」
嬉しそうにはにかみながら再び俯くその姿に。
堪らず握った手に力が籠もった。