来年笑う

□搾取
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 「ふぅ」
部屋に戻ると緊張を解くように息を吐く
老婆とは思えないような足取りでベッドルームの戸の前に行きドアノブに人差し指を乗せる
カチャリと言う音とともにロックが解除されたので開けて中に入る
ベッドルームだけは日本式になっており、外開きの戸を開けると小さい玄関があり靴が脱げるようになっていた
10畳ほどの部屋はリビングのクリーム色の壁とは違い紺色の壁が広がっていて、床は毛足の長い黒い絨毯が敷き詰められていた
部屋の真ん中には赤黒いダブルベッドがドンと構えており
窓がないこの部屋は本当に眠るだけの部屋のようだ

部屋の手前の両側に戸があって左側の戸はバスルーム右側の戸は研究室に続いている
部屋の左奥に化粧台とランドリーボックス
右奥にクローゼットがあるだけでわりとシンプルな印象だ
玄関の横にちょこんと小さな靴入れ棚があるが、頻繁に使われてないのか取っ手が半分とれかかっているのに修理はされてないようだ

毛足の長い絨毯の毛並みを素足で感じながら化粧台に向かう
身に纏っている深緑のローブを乱雑に脱ぎ化粧台のイスに投げかける

そのままベッドにダイブした姿は老婆ではなく
ローブと同じ色のノースリーブのシンプルなワンピースを着た
腰まである黒いストレートが少し幼い印象を与えるが20〜30代に見える色白の女性だった

 「夕飯はめんどいですわ」

声も少し高くなっており、年相応な少し高めのアルトだった

部屋の主が小柄なため
少々大きく見えるベッドにモソモソと入ると
そのままくうくうと寝息をたてて眠ってしまった
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