詩
□嘘つき
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車が走る音が気になるみたい、すれ違う他人が
気になるみたい。なんて、可笑しい。
とっくに私にはすべて分かっているのに。た
だ、ごまかそうをする仕草や焦っている横顔が
とてもいとおしく感じるから、私が全部分かっ
ていることは黙っておこう。
なんて、わたしもあなたと一緒だね。一緒なと
ころが増えて、うれしい。
血液型も利き手も赤いマルボロも寝る時の向き
もピアスの数も今まで付き合った人の人数も、
浮気相手の苗字も。
もうすぐ私たちの苗字も一緒になる、また増え
るね、一緒。
「ただの友達」あなたの吐いた嘘はひとつ、そ
う、たったそれだけ。
吐いたらそれが本当になるまで吐き続けるもの
よ、と車のブレーキ音も語っている。そう、本
当になるまで吐き続けるの、可笑しい?
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