さうす小説

□クレイグとカウンセリング
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先生と対面する形で置かれた椅子に、ため息をつきながら腰掛ける。
隣を見れば、腕を組んでいかにも不機嫌そうな面のクレイグ。

二人揃ってカウンセリング行きだなんて。
再びため息が漏れた。



クレイグとは普段から仲が悪く、言い合いをする事も少なくない。

しかし今日に限ってこんな事になったのは、俺がクレイグの飼ってるモルモットをからかったからだ。
そしたらいきなり態度を変え、食って掛かって言い返して来たのだ。

とうとうそれは肉弾戦に発展し、廊下のど真ん中で騒ぎを起こす事となった。



「んーけーい...。どんな時でも友達に怪我をさせるのはいけない事だよね。」

「コイツがストライプの悪口言ってきた。」

「お前が始めに中指立てて来たんだろ!ほら見ろまたやりやがった!」

「どっちが先でも、人を殴っちゃうのはダメなんだよね。殴られた人はとっても痛いし、怪我だけじゃ済まなくなるかもしれないんだよね。んけーい?」


クレイグを横目でチラリと見ると、腫れた頬にガーゼが宛てがわれている。

俺もこめかみにガーゼを宛てている。

お互い様だ。


「今日は怪我してるから家に返すけど、後で居残りさせるからね。ちゃんと二人で仲直りするんだよ。んーけーい?」


それに適当に返事を返し、カウンセリングルームを出た。





青い帽子が俺の前をふらふらと歩く。
家が近いという事もあって、同じ道を少し離れて歩いた。

なんだかその歩き方さえも癪に障り、青の背中に小石を当てると、クレイグはすぐに気づいて、振り返った。
そして俺に向かってまた中指を生やしやがる。
懲りないやつめ。

前に向き直ったを見計い、少し怒鳴り気味で話しかける。


「あーあ、もっとお前クールな奴だと思ってた。」

「最初は、足早えし、女子にモテるし、でも調子乗んないし、すげぇイケてるとか考えてたけど...」


横断歩道の手前で、信号が赤に変わり、クレイグと横に並ぶ。


「実際、ゲイで中指で、あんなデブネズミ一匹で怒るような奴だったなんてな。」

「次ストライプのこと悪く言ったらぶっ殺す。」

「へいへい。」


両手を挙げ、降参の意を示す。
こめかみから血を流すのはもう御免だ。

そんな悪態をつきながらも、信号が青になったことに気づく。

すると、クレイグがさっきの反撃かのように喋りだす。


「お前みたいなちゃらんぽらんよりは、よっぽど俺の方がクールだ。」

「はぁ!?ふざけ...ぅ、わ!?」

言い返そうと後ろ向きで歩き出した途端に、勢い良く腕を引かれ、俺はクレイグの胸倒れこんだ。
そのままもう一方の手が背中に回され、さらに体を引き寄せられる。

瞬間、後ろでビュンと風を切る音がして、バイクが通りすぎていった。


「おい!危ねぇだろ!」


バイクに向かって叫ぶ少しハスキーな声が、耳元で響く。

距離を詰めたことで、俺よりちょっと高い身長とか、体温がやけに高いこととか、クレイグの匂いとかを初めて知る。




「おい、いつまで引っ付いてんだ。」

硬直状態の俺をべりっとを引き剥がして、怪訝そうに顔を覗き込むクレイグ。
そして、にやっと笑って


「今のリーク、超ダサい。」


と、おでこを小突いて離れていった。
あれ、体温が高いの、あいつじゃなくて俺の方じゃないか!
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