スラダン(短め)

□宮城✖桜木軍団の女
1ページ/1ページ





『うぇい!!』

「おお…びっくりした…」


バスケ部の練習が始まる前
制服から練習着へと着替え、部室から出てきたところで名前が待ち構えていた
突然、現れた名前に、リョータの身体がビクリと驚きに強張る


『リョーちん、今日お誕生日でしょ?』

「あぁ…よく知ってんな…」

『おめでとう、言いに来た!』

「んだよ。プレゼントはなしか?」

『わたしの誕生日にプレゼントくれるなら用意してあげるよ』


ちぇーっと後頭部で手を組んで体育館へと歩きはじめたリョータの後ろに名前もひょこひょことついて行く


『じゃあプレゼントいらないのー?』

「お前のプレゼント用意しなきゃなんねーのは面倒くさいしなー」

『ええー』

「どうせお前は花道とか水戸に貰えんだろ?」

『貰えるわけないじゃん!花道だよ!?お馬鹿軍団だよ!?』

「その軍団にお前も入ってんだろうが」

『わ、わたしは馬鹿じゃないし…?』

「どうだか」

『…リョーちんも赤点軍団のくせに』


名前の言葉を無視して体育館シューズに履き替え「ちゅーっす」と入っていくリョータに、相手にされず不満な名前は口を膨らませて目を細め、リョータの背を睨んだ

だがそのリョータの顔はくるり、と背後にいる名前に向けられ…


「苗字ちゃんはさぁ…”おめでとう”だけ言いにわざわざ夏休みに俺に会いに来たの?」

『は、はぁ?違うし…』

「ふーん?そっかそっかぁーへぇー?」

『あ、ちょっと!リョーちん!!』


ニヤニヤとして練習へと行ってしまったリョータにまたしても拗ねる名前は、ドアのところで座り込んでボーッと練習を見ることにした







「あ?今日の暇人はお前だけか?」


休憩時間…
花道が名前の元へとやってきて、キョロキョロと名前の周りを見渡す


『洋平たちはわざわざ夏休みに練習を見に来ないでしょ…』

「じゃあ何でお前は来てんだ?」

『えっ…』


名前が目を泳がせて何と言おうかと悩んでいると…


「苗字ちゃんは俺に会いに来たんだよなー?」

「な、なに!?どういうことだ!?」


興奮気味にリョータと名前を交互に見る花道と、座り込んでいる名前の頭に肘を乗せてうんこ座りをし、花道を見上げてドヤ顔を見せるリョータ

名前はその手を払って立ち上がり『帰る!』と2人に背を向けて去って行く
その声は怒っているようで、花道は首を傾げながらリョータに振り返る


「おい、リョーちん…いいのか?なんか怒ってたぞ」

「ちょっくら行ってくるわ」


まだ休憩ははじまったばかり
リョータの足取りは軽く、名前を追いかけた


「苗字ちゃーん」

『え!』


まさかリョータが追いかけてくるとは思わず、立ち止まってリョータに振り返る


『な、何…』

「いやまぁ…からかいすぎたかなーって」

『……………』


尚も余裕な表情のリョータから謝る気なんて微塵も感じず、名前は目を細める
だがリョータに構って欲しい名前としては追いかけてきてくれたことが嬉しくもあった


「で、もう帰んの?」

『………だって…』


口を尖らせて拗ねる名前に、たまらずリョータは吹き出す
まだ付き合ってもいないのにこんな風に想われるのも悪くない、と思うリョータは名前を愛らしいとさえも思う


「練習、17時に終わるから待っててよ」

『なんで…?』

「どっか行こうぜ。祝ってくんない?誕生日」


パァッと笑顔が溢れる名前にまた吹き出すリョータ
けどそんなリョータに、ハッとした名前はコホンと咳払いを一つして腕を組んだ


『仕方ないなぁ!祝ってあげてもいいけど?』

「んー、じゃあいいや。別に祝ってもらわなくても」

『あああ!嘘!嘘だよ!待ってるから!』


名前に背を向けて体育館へ戻ろうとしたリョータの背に必死に声をかける
だがそんなリョータは名前に背を向けていることをいいことに、んべーっと舌をだして悪戯が成功した少年のような顔をしていた


「じゃあいい子で待ってて」

『い、いい子って…子供やあるまいし…』

「苗字ちゃんは可愛い可愛いおこちゃまだよ」

『え…どういうこと…褒めてる?』


馬鹿にされていることがわからない名前は首を傾げている
そんな名前にまた吹き出すリョータは体育館へと戻った






「ぬ?リョーちん、何をニヤニヤしてんだ?」

「いやぁ…結構やばいわ、俺…」


リョータはこの後、練習中もずっと顔が締らず、口元がニヤついていて注意されていたことは言うまでもない

余裕ぶっていたリョータはどこへやら名前の愛らしさに余裕がなくなってきていた
頭から離れない名前に思わず眉を顰める


「え…俺…これから大丈夫かな…」


散々、余裕ぶってからかっていたのにこれからもそれができるか不安になったリョータは、座り込んで練習を見つめている名前に目を向けると、バチッと目が合う
名前は少し頬を染めて目を反らしたかと思えば、体育館にある時計に目を向けた
そんな名前から視線を外すことなく見つめていると、名前はリョータに向かって指で””1””を作った

ん?どういう意味だ?と思いながらリョータも時計を見ると、針は16時を指していた
“”あと1時間””という意味だったことを理解したリョータは頭を抱えたくなった

楽しみで仕方がないといった名前がたまらなく可愛いのだ


「ハァー……好きだわ……」


リョータも残りの1時間に胸を躍らせたのであった








続くかも…?


.



次の章へ
前の章へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ