スラダン(短め)

□三井✖妹
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まだ6月にもなっていないというのに初夏のような暑さが続く今日この頃。


「寝坊した!!!」
『バカ兄貴。』
「うるへー!!」


朝から騒々しくバタバタと着替えを済ませて食パンを咥えたらすぐ玄関へと向かう


『今日は早く帰ってきてよ!』
「あ?なんでだ?」
『自分の誕生日も忘れたの?』
「ああ…別にもういいっつーのに…」


靴を履き替えながら照れ臭そうにボソリと呟くと、「時間大丈夫なの?」と母親に諭されて「行ってくる!」と慌ただしく家を後にして行った。


「今日は遅いんじゃない?」
『え?なんで?』
「だってバスケ部に復帰したんだもの!きっと遅いわよ」


ふふふ。と嬉しそうに笑う母に名前もつられて、つい口元が緩むのを堪える。


『ケーキ作ろっかな!』
「え?作ったことあるの?」
『ない!!けどやる!!』


母は用事があるようで、名前は一人で材料を買い、スマホでケーキの作り方を検索し、照れ臭そうにお礼を言う兄を想像して、楽しみながら作った。











『遅い!!!』
「悪かったって」
『もう21時だよ!!?』
「まだ21時…だろ?」
『もう21時だよ!!!』
「何そんな怒ってんだよ…」


玄関で座り込んで靴を脱ぐ三井を、腕を組んで見下ろす名前は頭にきていた。


『早く帰ってきてって言ったのに!!』
「部活の奴らが祝ってくれたからよ」
『わたしだって準備してたのに!』
「わーったわーった。何を準備してくれたんだ?」


面倒くさそうに投げやりにそう告げる三井に名前は大股でキッチンへと向かう。
その後ろをのそりとついて行った三井だったが…


べちゃ!!!!


「な……何すんだよ!!!!」
『うるさい、バカ!!もう二度と作ってやんない!!!』


名前はなんと、作ったケーキを三井へ投げた。
大きなケーキは投げてもうまく顔には当たらず、胸元にべちゃりとケーキがまみれ、床にもボトリと落ちる。


「なんでそこまで怒るんだよ…」
『……………』


どれだけ楽しみにしていたか。
去年、自身の誕生日に兄がおらず、だから今年は…今日は全員でお祝いができると思った。

学校が終わってすぐに買い物へ行って、途中でやめそうになりながらもそれでも、喜ぶ姿を想像して頑張って作った。

バスケ部に復帰したことは嬉しかった。
でも自分との時間も作って欲しかった。

ワガママで幼い自分に自己嫌悪しながらも1度イライラしてしまえばなかなか収まりがつかない。


「名前、お前……生理前か?」
『さ、最低!!このクソ兄貴!!』
「悪かったよ…ほんとに。」


三井は床に屈んで落ちたケーキの塊を拾い上げて、パクリと食べた。


「おう、うまいな。ほんとにお前が作ったのか?これ」
『…うん。』


うまいうまいと、指を舐める三井。
名前もそんな姿を見ると、単純なものでイライラが引いていく。


「感情的な女はモテねーぞ?」
『誰が言ってんだ。』


確かにな。とケラケラと笑いながら三井は洗面所へと消えていく。
落ちているケーキを拾い上げて片付けている愛菜の元にまた三井が戻ってくると…


「仕切り直すぜ。」
『…どうやって?』
「今からケーキ作るんだよ。」
『は!?今から!?』
「どうせお前のことだ。材料、残ってんだろ?」


冷蔵庫をガチャリと開けて「ほらな。」と口端を吊り上げて笑う三井。

失敗した時ように多めに買っていた材料を、次々と出して「ほらやるぞ。」と名前に目を向けて、名前も慌ててエプロンをつけてキッチンに立つ三井の横に並んだ。




『きたない!ちゃんと綺麗に塗ってよ!』
「あ?食べたら一緒だろうが。」
『だからモテないんだよ、兄貴は!』
「んだと!?」


キャッキャウフフ…というわけにはいかないが、ワイワイとケーキを2人で作り進めていく。


『あ!つまみ食いした!』
「お前も食うか?」


名前の返事を聞かずに、苺を強引に口の中へ放り込む三井。


『んー、少ししょっぱいね』
「それがいいんだよ。」


そう言って苺をもう一つ食べる。
ずるいずるいと言えばまた苺が口に放り込まれる。


「嫌ァァァ!!何これ!!!」


リビングから叫び声が聞こえて一目散に駆け寄る。


「どうしたお袋!」
『………あっ。』


母が見たものは……


「ちゃんと、片付けなさい!!!!!!」

『「すんません…」』


放ったらかしにしていたケーキの残骸だった。






今年の兄の誕生日は慌ただしく…


「うん、うまいな!」
『うん!』
「お前の誕生日はまた違うケーキ作ろうぜ。」
『うん!!!』


楽しい誕生日だった。


『兄貴。』
「ん?」
『お誕生日、おめでとう。』
「…おう」









5月22日は三井寿の誕生日!




fin


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