スラダン(短め)

□洋平✖夜逃げ同級生
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『ねぇ、このバイクどうしたの?』
「あ!?聞こえねーよ!!!」

風、エンジンの音…
わたしの声をいとも簡単に消していく

『この!!バイク!!どうしたの!!』
「盗んだ!!!」
『は!?』
「盗んだバイクで走り出してんだよ!!!」

そう楽しそうに高らかに叫ぶ水戸くん
何故かわたしは、ギャハハハ!尾崎か!なんて突っ込んだ
水戸くんとはただのクラスメイトで、地味なわたしが水戸くんと話すのは今日が初めて
バイクを盗んじゃうような人と関わったことがないのに、いつもなら怖いはずなのに…
今は全てがどうでもよくて、あの場から連れ出してくれた水戸くんに感謝している




「苗字…さんだよな?同じクラスの」
『え……あ、水戸くん…?』
「そ。どうしたの?」
『………ちょっと』
「ふーん…なぁ、苗字さん。3分だけここで待ってくんねーか?」
『え…?』
「3分!待ってろよ!」

3分だったらチキ●ラーメンができるなぁーなんて、これからどうしようかなーなんて考えていたら、バイクに跨る水戸くんが目の前に現れた
ガポッとヘルメットを被らされ、「乗れよ」と言われてしまえばわたしは水戸くんの後ろに跨っていた




『どこに向かってるの!!?』
「適当!!!」
『適当!?』
「不安か!!!」
『む…不安じゃない!!!』

馬鹿にされている気がしてそう叫べば、水戸くんの肩が揺れていた
…やっぱり、馬鹿にされている

『あ!!!朝日!!!』
「おう!!!あの朝日に向かって走ってんだよ!!!」

ギャハハハ!と笑えば、ぐん!と更に加速する

「ちゃんと掴まれよ!!!」

水戸くんの腰に回している腕のちからを強める

今この瞬間だけは、わたしが主人公なのだと思えた
今この瞬間が…永遠に続けばいいと思った






「やっぱ朝は冷えんなー」
『うん…』

わたしは砂浜に座り、水戸くんは海に足をつけて遊んでいる
水戸くんは大人びていると思ったけど、海で遊んでいるさまは普通の男子高校生だ

「何かあった?」
『………………』
「言いたくなければいいけどさ」

わたしの隣に腰を下ろして砂で遊び始める
あれ…?
気まずくならないように気を遣って遊んでいる…?

『信じられないかもしれないけど…』
「…うん」
『人を殺したの』
「あはははっ。そりゃ信じられねーな」
『だよね』

2人で乾いた笑い声をあげる





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