スラダン(短め)

□三井✖桜木軍団の女
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インターハイ予選を前に、湘北高校バスケ部はピンチに陥っていた話しをみなさんご存知でしょうか

わたしは運悪く、その日はバスケ部に顔を出してなかったため後日、洋平たちが謹慎になった話しを聞いた

話しを聞いただけじゃ何故、元凶の三井とやらがバスケ部に戻れたのかがわからなかった


『………あんたが三井?』
「あ?誰だお前」
『花道のダチだけど。』
「桜木の…?」
『あんたの実力は知らないけど頑張ってよね』
「…?」
『謹慎になった洋平たちのこと忘れたとは言わせないよ!!ちゃんと頑張ってって言ってんの!!』


わたしは何故こんなことを三井にわざわざ言おうと思ったんだっけと急に恥ずかしくなって三井の前から慌てて逃げた
早くも黒歴史になりそうだ




それからしばらくしてから…


「おう、遅ぇーぞ」
『………はい?』
「焼きそばパン買ってこい」
『テメーで行け!!!』


何故か三井に纏わりつかれてる
それもわざわざ、1年10組まで来るくせにパシリに使わせる意味が分からない


「ミッチー、クラスに友達いないのか?ニシシ」
「あ!?そんなんじゃねーよ!」
「三井さんは名前に会いに来てんだよな?」
「あ!?んな訳ねーだろ!こんな男か女かわからないようなやつ!」
「ミッチーもついこの間まで女男だったじゃねーか」
「誰がだ!!」


1年生にイジられ倒す三井に思わず吹き出す
すると三井はぐるんっと首を回してわたしに振り返った


「笑うんじゃねーよ!」
『とても年上とは思えないんだけど』
「お前ら…先輩を何だと思ってやがんだ…」


チッと舌打ちを漏らす三井
そういうところがイジられやすいんだと思うんだけど


「今日は練習、見に来んのか?」
『あー…気が向いたら?』
「最近、見に来ねーじゃねーかよ」
『なんでわたしに見に来て欲しいの?』


首を傾げると三井は照れ臭そうに後頭部を掻く


「お前がちゃんとしろって言ったんだろ?責任もって見に来い」


もごもごと口篭もりながら告げる三井
それにわたしは眉をしかめる


『わたしが見に行かなくたってちゃんとしなよ』
「ちゃんとしてるっつーの!どうせお前のことだから疑って裏でグチグチ言ってそうだから見に来いって言ってんだよ!」
『はー!?裏でグチグチ言いませんー!素直にわたしに見てほしいって言えばぁ??』
「おまッ、勘違いすんな!自意識過剰!」
『毎日、昼休みに教室まで来るくせに…自意識過剰だと!?』


ヒートアップしていくわたしたちに花道はケラケラと笑い、洋平は間に入って止めてくれた


「毎回、同じやり取りしてよく飽きねーな」
『三井が突っかかってくるから!』
「お前だろ!突っかかってくんのは!」
『はい!?じゃあ、もう教室に来ないで!』
「お、おうよ!!もう来ねーよ!」
『練習も見に行かないから!』
「おう!!来んな来んな!!」


三井は教室を出て行った
わたしは椅子にドカッと座って買ってきた紙パックのジュースをちゅうっと飲む


「三井さんは素直じゃねーな…」
「ミッチーが素直だったらグレてねーだろ」
「いやまぁ…そうかもしんねーけど」
『…………………』
「名前…お前、あんなこと言ってよかったのか?」
『な…なにが?』
「ハァ…お前も素直じゃねーな」
『…………………』


三井がこんなやつだとは思わなかった

あの時…三井を待ち伏せた時…
現れた時はどうしようもなく心臓が跳ねた

この人がバスケ部を追い込んだなんて想像もできないくらいに…格好いいと思ってしまった

それなのに蓋を開けてみればどうだろう?
年上だとはいえ、いつも上から物を言い、パシリに行かせようとする
いつも何かと命令口調で、本当に年上か?ってくらいすぐに怒鳴る

いつも口喧嘩になるのに飽きもせずにまた教室に来る
それを見てどこかいつも安心していた自分


「2人が素直になれる日は来るんかね?」


ぽつりと呆れたように言い放つ洋平
わたしは聞こえない振りをした








「あれから三井さん、来ねーな」
「クラスに友達でも出来たんじゃねーか?」
「いや、そうじゃないだろ…」


洋平がチラッとわたしを見る
その視線に気づきながらもわたしはそっぽ向く


「俺はてっきり何事もなかったかのように教室に来ると思ったけどな」


誰に向かって言っているかはわからない
でも恐らく…いや絶対にわたしに言っている
それを言うならわたしだって次の日にはケロッと教室にいると思っていた


「名前、お前は最近会ったか?三井さんに」
『………会ってないけど』
「ミッチーなら部活の時いつも通りだぜ?そんな気にすることねーよ」


花道の言葉に何故か肩が重くなる
わたしはショックを受けているのだろうか…


「こりゃ意地の張り合いだな」
「ぬ?」
『…………………』


洋平の含み笑いに耐えられず教室を出た
高宮たちのところに行っても、ミッチーとどうよって言われそうで嫌だから果てしなくトボトボと歩く


「あ?苗字…お前なんでこんなとこにいんだよ」
『え………ッ!?』


気付いたら三井が目の前に立っていた


「3年の誰かに用か?」
『あ…いや…ボーッとしてただけ』
「そうか……じゃあな」


わたしの横を通り過ぎようとする三井の袖を思わず掴む
三井は驚いた表情で振り向く


「…なんだ?」
『は?なんでもないし』
「じゃあ離せよ」
『………………』


冷たい三井に目頭が熱くなる
いやわたしはそんな柔な女じゃない

そう自分に言い聞かせ『久しぶりに間抜け面をもっと拝んどいてあげようと思ったんだよ!』なんて可愛い気もない言葉を吐いた

三井は一瞬キョトンとするがブフッと吹き出し、お腹を抱えて笑い始めた


「お前…本当は俺に会いたかったんだろ?」
『は、はぁ!?!?!』
「最近、顔出してなかったからな」
『ち、違うし…』
「根比べと思ってたけど…お前の負けだな」


まるでわたしが会いたくて会いに行くとわかっていたような言い回しに顔が熱くなる
何が根比べだ!とわたしは三井に背を向ける


「あー、待て待て」
『………何』
「ちょっとついてこい」


そう言って三井は先に歩きはじめる
わたしは少し距離を取ってついていく
すると、人気のない廊下の窓際に三井が立ち止まる


「ここからあそこ見てみ?」


三井が指さす方を素直に見る
そこは1年10組の教室が見えた
ちょうど教室から花道と洋平が出て来たのが見える


「ここだとお前のクラスが見れんだよ」
『え…』
「だから俺はお前に会わなくてもお前のことは見てた」
『は、は!?そんなのずるい!』
「何がずるいんだ?」
『ッ、!?』


ニヤニヤとした三井に、しまったと後悔してももう遅い


「お前も俺に会いたかったってことだろ?」
『………………』
「認めろよ。な?」


三井に顔を覗かれ、顔が赤くなる一方のわたしはどうやら負けを認めなきゃいけない上に三井に会いたかったことも認めなきゃいけないらしい


でも不思議と敗北感はなく今は静かにコクンと頷いたわたしを見て嬉しそうに笑う三井に目が離せない



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