スラダン(短め)

□沢北✖先輩マネジ
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2月14日 バレンタインデー

日本では女性から男性にチョコレートを渡す日
チョコレートを添えて愛を告白する日とされている







もちろん、ここ、山王工業高等学校でもバレンタインデーは存在する


「ちゅーっす」
「おはようございます!」
「うーっす」
「はよー」

沢「名前先輩!はよっす!」

ガシ。

『うん、おはよう。』
沢(ニコニコ)
『……………』
沢(ニコニコ)
『………え、なに…ていうかその手は何。』


山王工業男子バスケ部

挨拶に顔も向けず何かをノートに取っていた名前は、背後から両肩に手をおいて顔を覗きニコニコと笑っているこのエース、沢北栄治に不機嫌な顔で振り返る


沢「先輩、今日は何の日?」
『は?』
沢「今日!」
『………………』
沢「でもまぁ!まだまだ今日は終わらないから待ってるよーっと!」


沢北はルンルンと去って行った
そんな沢北を見て、思わず溜め息を漏らす


深「苗字のチョコ期待してるベシ」
河「必死に頼み込んでたからな…それで用意してくれたんか?苗字」


深津と河田が名前に近づく
2人を見据えて答えた


『みんなの分ちゃんと用意したよ』
河「お前はなんだかんだ沢北を甘やかすでねーの」
『あんたたちだって欲しいとか言ってたくせに』
深「あの時の沢北は面白かったベシ」
河「そだなー」
『……………』


話しを変える2人を睨むが2人は知らないフリ



何があったかというと今から1週間前…


‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐


‐‐体育館
それは部活が始まる前…


沢「先輩!名前先輩、お願いだって!!」
『嫌。面倒くさい。』
沢「ちゃんとホワイトデーのお返し用意するから!お願い!!」
『一体、何人分あると思ってんの?だから去年は何もしなかったの』


沢北は周りの目も憚らず、名前にチョコを用意してほしいと頼み込んでいた


沢「倍で返すから!ホワイトデー倍で返すから!!」
『………………』
沢「無視!?」
河「そういえば去年、俺達にはくれなかったけど先輩たちにはあげてたよな?」
深「ベシ。」

沢(ガーーーーーーン!!)


河田と深津がひょっこり現れて爆弾を放った
沢北は体育館に膝をついて絶望していた


『そりゃ先輩だから用意したの。なんであんたたちにチョコ渡さないといけないの』

「「「「(ガーーーーーーン)」」」」

モップ掛けをしている1年生、すでに体育館にいる2年生、全員がガッカリした


沢「ま…まさか…3年生には今年もあげんの…?」
『当たり前でしょ。』


またショックを受けた沢北は、泣いて名前の右腕を掴んで縋った


沢「なんで!?!もう、卒業するんだからいいじゃん!それより俺に用意してよ!!」
『何、泣いてんの…卒業するから渡すんじゃないの』
沢「3年生は去年も貰ってるくせにずるい!」
『ずるいって何…』
河「お前はすぐ泣くな」
深「沢北はファンにいっぱい貰うベシ」
河「そうだ。貰うとしたら俺らだろ」
沢「何言ってんすか!俺は、名前先輩のチョコが欲しいんすよ!!」


ヒューと河田は口笛を吹く
だが名前は気にした様子はなく沢北に掴まれている手を払った


沢「名前せんぱーい…グス…お願い…」
『……………』


手を払ったのに気にした様子もなく、また名前の右腕を掴んで縋る沢北
根気強い沢北に名前は折れた


『わかったわかった。』
沢「えッ!!!」
『用意してあげるから離して』
沢「ほんとに!?マジで!?」
『ほんと、ほんと。だから早く離せ』
沢「よっしゃーーーー!!!」


大袈裟に喜ぶ沢北に名前は思わず笑う
それを見て沢北は更に喜んだ


深「……………」
河「……………」


先ほどまで楽しんでいたくせに、2人は沢北を睨む
そしてしつこいくらいに喜ぶ沢北に河田はヘッドロックをかけた


沢「痛い痛い痛い!!!」
河「なんでおめェが苗字にチョコ貰えんだ」
深「許されないベシ」
沢「ちょ、痛い!マジのやつ!痛い!ギブ!」


深津と河田が沢北を攻めていたら周りの2年生と1年生も声を荒げた


「そうだそうだ!俺らだってほしい!!」
「俺もマネージャーからチョコほしい!!」
「沢北、死ね!!」
「マネージャー俺らにもくれー!!」

沢「ちょ!今死ねって言ったの誰すか!?」


周りからは怒号、相変わらず河田からは絞められていて、男子バスケ部はめちゃくちゃだった
堂本監督も体育館に入り、何事だ…と周りを見渡す


『わかった!みんなの分も用意する!だから真面目にして…』


頭を抱える名前を他所に、男子陣は喜びに声を上げ、体育館に響いた

堂本は把握したのか、コイツ等も高校生だもんなと変に納得し、名前に労うように肩に手を置いた


堂「苗字、俺がチョコ代出すから適当に人数分買ってやれ」
『え?いや、いいんです。わたしが引き受けてしまったんですから…』
堂「あの状況は引き受けるしかないだろ…いいから、俺が出すよ」


そう提案してくれた堂本監督に丁重に断った
だがその代わり、今回は堂本監督に用意する余裕がないことを伝えた



‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

―‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐


それが1週間前の出来事


河「それでいつくれんだ?」
深「貰ってあげるベシ」
『先に先輩たちにあげたいから帰りだね』
河「先輩たちにいつ渡すんだ?」
『お昼休みに3年生の校舎に行って渡すよ』
深「……………」
河「……………」
『何?』


黙って哀れな目で見つめてくる2人に怪訝そうに尋ねる
深津は労うように名前の肩に手を置いた


河「大変だな…」
『だから先輩たちの分だけにしたかったのよ…』


そわそわする部員を無視して朝練は始まる
ザワザワしているかと思いきや、
「いつマネージャーから貰えんだ?」
「帰りに貰えるらしいぞ」と騒いでいた












**********



部活終了後
片付けも終わって部員みんながソワソワとしていた

そんな様子に気づかない名前はどうやら日誌を書いている


沢「名前先輩!!」


沢北が名前のもとに駆け寄った
(((さすが沢北!チョコの催促をしてくれ!)))と誰もが思ったが…


沢「一緒に帰ろ!」
『え、うん。あともう少しで終わる』
沢「そんなの明日でいいから早く!」
『ちょ、沢北!』


無理矢理、名前を連れ出そうとする沢北にバスケ部員全員が道を塞いだ


河「どこ行くんだ?沢北〜」
深「独り占めは許されないベシ」

沢「うッ…名前先輩のチョコは全部、俺のなんすよ!!」


沢北の発言に全員が、やっぱりコイツは…!とリンチが始まる
沢北の泣き叫ぶ声が体育館に響く


『みんなに渡すから!』

「「「「「はい!ありがとうございます!!」」」」」


名前の声に全員が整列をした
沢北は倒れたまま「くそ…」と呟いた


『ここに置いておくから1人3個好きなの取って』


わーいと群がるがそこにあったのは大量のチ●ルチョコだった

全員が固まる


『いらないんだったらわたしが持って帰るけど』


その言葉に全員が一斉にチ●ルチョコを取った
お礼を言ってほとんどの部員が帰って行った

最後に3個残ったチョコを今だにスンスンと泣いている沢北に渡す


『はい、沢北の分』
沢「………俺が欲しかったのはこんなんじゃない」
『じゃあ、いらないんだね?』
沢「…いや貰う」
『はいじゃあ帰るよ?』
沢「………うん」


何故か拗ねる沢北に名前は首を傾げながら2人で帰る






沢「なんでチ●ルチョコ…」
『ちゃんとしたの買ったらいくらかかると思ってんの』
沢「そうだけど…その分、みんなでホワイトデー、いいの買うのに…」
『ていうかホワイトデーいらないから』
沢「ええッ!?」


部員のセンスを信じられない名前である


沢「それで…実は俺に他にチョコ用意してたり…?」


ゴクンと生唾を飲む沢北
だがしかし、名前はキョトンとしていた


『いや、用意してないけど』
沢(ガーーーーーーン)
『え…むしろ用意すると思ったの…』


どこからその自信が湧くんだと呆れる

だが突然「まぁいいや」と俯いていた顔を上げ、名前の正面に立つ


沢「これなーんだ?」
『?』


沢北がカバンから取り出したのは小さな可愛い箱
その箱をジッと見つめていると、手を取られ、手の上に乗せられた


『え…』
沢「開けて?」
『うん…』


小さな箱のラッピングを解き、開けると…


『チョコ…?』
沢「うん、チョコ!逆チョコ!」
『逆チョコ…?』
沢「そ!嬉しい?名前先輩、嬉しい?」


背の小さい名前に対し、屈んでしつこいくらいに顔を覗く沢北の顔を退ける


『逆チョコって柄じゃないでしょ…』
沢「名前先輩が相手だからね」
『…どういう意味?』
沢「手強いってこと」


褒められている気がせずに眉をしかめる
でも嬉しいのは嬉しい
お礼を言うと今まで見た中で1番、嬉しそうに笑った


『これ買ったの?』
沢「もちろん!めっちゃ恥ずかったんだから」


沢北が買うところを想像して思わず吹き出す
そんな名前に、沢北は拗ねる


『そんな坊主でこんな可愛いチョコ買ったの…プフフ』
沢「坊主は関係ないっしょ!?」


再び2人は歩きはじめてしばらく笑い合った






沢「先輩」

『んー?』

沢「来年は貰うから」

『何を?』

沢「本命のチョコ」



ハッピーバレンタイン!



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