企画用(短め)

□宮城✖桜木軍団の女
1ページ/1ページ





「よっ!」

『""よっ""…じゃないよ!遅い!』

「悪い悪い」


たくさんの屋台が並び、たくさんの人で溢れているこの夏祭りが行われる地元の神社の前で待ち合わせをしていた宮城と名前だが、宮城は5分ほど遅れた。

宮城は全く詫びる様子はなく、怒る名前を無視して早く行こうぜーとポケットに手を入れて先々と神社の中へと歩きはじめた。


『せっかく浴衣、着てきたのに…』


名前がぼそりと呟いた言葉は宮城に届くことなく、先を歩く宮城の背を追いかけて名前は走った。



………


『リョーちん、フランクフルト半分こしよー!』

「半分こー??」


名前が目を輝かせてフランクフルトの屋台を指をさすが宮城は怪訝そうな顔をしながら屋台へと向かった。
そんな宮城に名前は眉を顰めて、立ち尽くした。

今日の夏祭りは宮城から誘われたものだった。
名前は、好きな宮城から誘われ、天にも昇るほど嬉しく、わざわざこの日のために浴衣を買いに行って、夏祭りを楽しみにしていた。

なのに宮城はあまり自身のことを見てくれず、むしろ何故か冷たい態度だ。


「ほら。」

『……え?』


立ち尽くしているところに目の前に現れたフランクフルト。
顔を上げると、宮城は2本のフランクフルトを持っていて、1本は名前に差し出していた。


「半分じゃ足りねぇーから」

『あ…ありがと…』


名前がフランクフルトを受けると一瞬、微笑んだ宮城を見逃さなかった。
だがすぐに名前から背を向けて、人混みから避けたところに行ったのでそれを追いかけ、2人で人混みの波や屋台を見ながらフランクフルトを食べた。

冷たいかと思ったらいつものように優しい…一体どういうことだ。なんかおかしい。と思いながら宮城を横目で見つめるが宮城はすぐに顔を反らしてあまり顔色を窺わしてもくれない。

名前はそんな違和感にどうしたもんか、と思いながらフランクフルトを食べていると…


「あら!リョータじゃない!」

「ん?……ええ!?彩ちゃん!!!」

「名前と一緒に来たのね!」


人混みから宮城と名前の元へ、手を振りながら駆け寄ってきたのは彩子。
宮城は驚きに彩子の名を叫び、名前も驚きにそちらに目を向ける。

彩子が名前の前へと来ると「浴衣、似合ってるじゃない!可愛い〜!!」と名前を褒める。
名前は、ありがとう彩ちゃん。と返し、まだリョーちんには褒めてもらってないなぁ…と宮城をチラリと見るも、宮城は彩子の隣にいる男性が気になっていたようだった。
その様子に名前がムッとしていることに宮城は気づいていない。


「アンタ、私を誘うからてっきり一緒に行く相手がいないんじゃないかと思っちゃったじゃないのよ!」


彩子は宮城の背中を笑いながらバシバシと叩いて、宮城と名前を交互に見つめてニンマリと笑った。

だが名前は、宮城が彩子を夏祭りに誘ったのかという事実で頭の中がいっぱいだった。
彩子に断られたから自分を誘ったんじゃないのか、断られた腹いせに彩子に他の女といるところを見せたかったんじゃないのか、と良くないことばかり頭の中で駆け巡る。


「じゃあ邪魔者は消えるわね!」


そう言って彩子は、一緒に来ている男性の腕に自身の腕を絡めて人混みの中へと消えて行った。
「まさか彩ちゃんに会うとは…」と参ったように告げる宮城だが、名前は先ほどから嫌な考えが拭えない。


『彩ちゃんにも夏祭り誘ってたんだね…』

「ああ、いや、それは…」


――――ボカッ


名前は、宮城の顔を殴った。
突然の衝撃に宮城は尻餅をつき、周りにいる人たちも騒然としている。


『もう彩ちゃんには一緒に居るところ見られたんだから私の役目は終わったんでしょ?じゃあ帰るから。』

「は!?ちょ、どういう意味!?なぁ!」


宮城の声を無視して名前は人混みの中、うまいこと人をすり抜けて早々と歩いていく。
慌てて追いかける宮城だが、人混みの中、すぐに名前を見失った。



………


『もう…っ!!』


名前は悔しげに地団駄を踏んだ。
宮城の顔を殴った拳が今更ジンジンと痛み始めて眉を顰める。

宮城はそんなことをする奴じゃないと信じたい自分と、信じたその先にもっと大きな裏切りにあったとして傷つくのが怖い自分と、頭の中はごちゃごちゃでどうしたらいいかわからなかった。


「待てって!」

『!』


腕を掴まれて後ろを振り向くと、そこには肩で息をしている宮城がいた。
名前は掴まれた腕を放してもらおうと引っ張るが、宮城がその腕を放さない。


『…何?』

「俺が聞きたいっつの!急に殴って帰るってどういうことなんだよ!!」

『…え。』


あまりの宮城の怒りように名前の目が点になる。
怒りたいのは名前のはずなのに、宮城は眉間に皺を寄せ、人目もはばからず怒声をあげる。
名前の腕を掴んでいる手もどこか強い。


「先に彩ちゃんを誘ったことに怒ってんのか!?それなら俺は部活のみんなで行こうと思ってたんだよ!そしたら彩ちゃんは先約があるって言うし他の奴らも行けないって言うし!!………だからそれならお前と2人で行こうと思ったんだよ…」


最後らへんは声が消えそうなほど小さく照れくさそうに呟いた。


『彩ちゃんに断られた腹いせで私と一緒にいるところを見せつけたかっただけなんじゃないの…?』

「ハァ!?どうなったらそういう思考回路になるわけ!?」

『えっ。』


また宮城のあまりの怒りように名前の目は点になる。
そんな名前に、大きな溜め息を吐いて宮城は苛立ちに後頭部をガシガシと掻いた。


「昨日も祭りあったろ?本当は昨日、部活の奴らと行って、今日お前と行くつもりだったんだよ…。だからお前とは元々2人で行くつもりだった」


地元の夏祭りは二日間のみ行われることはもちろん知っていたが、まさか宮城がそんな風に考えていたことなど名前は知る由もなく…。


『リョーちん、殴ってごめ…』

「行くぞ。」

『えっ、あ!ちょ…!』


名前の言葉を遮り、宮城は掴んでいる腕をそのまま引っ張ってグイグイと祭りへ戻っていく。
引っ張られながら、とんでもない勘違いをして殴ってしまった、と後悔する名前がシュンとする。


「浴衣…」

『…?』

「浴衣、クソ似合ってる!クソ可愛い!!」

『!』


名前に顔を向けることなく、言い放った宮城の耳は赤く、それに気づいた名前はくすりと吹いた。


『何で早く言ってくれなかったの?』

「恥ずいからに決まってんじゃん…。」

『でも彩ちゃんのこと好きだった時は…』

「やめろ!!黒歴史を掘り返すんじゃねぇ!!」


""黒歴史""だと言ってしまう宮城に名前は嬉しくて微笑む。


「わかってんだろ?…俺は名前が好きだから」

『ほんとに…?でもたまに不安になっちゃうかも…』

「少し時間ちょうだい。すぐその不安なくしてやるから。」

『うん…』

「じゃあまず、手。」

『手?』

「繋ぐぞ」

『うんっ!』




Fin



.


次の章へ
前の章へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ