企画用(短め)

□茂一✖女バス部員
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「苗字さん!違う!!」

『はいッ!!』

「だから、違う!!そこでパスもらうんじゃないでしょ!!」

『はいッ!!!』



陵南高校女子バスケ部

男子バスケ部が期待されているため、女子も負けじと毎日毎日練習の日々だった













「お疲れー」
「お疲れさまでしたー」
「苗字さんあんま無理したらダメだよー」

『はい、お疲れさまでした!』



部活終了後

わたしは1人、自主練をしていた
女子と男子は別の体育館でやっている



---ガスッ


『…ぅッ…、……くそ…』


全然うまくいかないシュートに涙がじわりと溢れる
それでも溢れないように上を見上げた
顔の汗が重力によって首へと滴り、天井は涙で歪んで見える


冬だというのに体育館の中は暑い

一旦、頭を冷やすために外へ出た
冷たい風が気持ちいい

もう部活は終了時間を過ぎているが男子の方の体育館の明かりがついているあたり誰か自主練をしているんだなーと嬉しくなる

私も負けないようにもっと練習するぞ!!




****



『はぁー…疲れた…』


更衣室で着替え、誰に言うわけでもなくつい独り言を漏らす

体育館の電気を消して鍵をして、この鍵を返しに職員室へ…


「苗字くん」

『あ、田岡先生!ちゅーっす!』

「あぁ…君はいつもこの時間までいるね」

『まぁ…下手くそなので』


へらりと笑えば田岡先生は、うむと頷いた

ひ、ひどい…そんなことない。とか言ってくれないの…?


「まぁ、君の努力は認めるよ。これ飲んでまた明日も頑張りなさい」


そう言って田岡監督がくれたものはホットココアだった


『え…いいんですか?』


また、うむと頷く田岡先生
怖いイメージがあったので驚いてしまった
お礼を言うのも忘れて私は温かいココアを見つめる


「あー……コーヒーの方がよかったかね?」

『い、いやいや!!!』

「女性は甘い方がいいと思ってな」

『はい!ありがとうございます!』


私は頭を下げた
汗をかいた後の夜風はとても寒い
ホットココアが嬉しかった


「苗字くん、鍵は一緒に返しておこう」

『え、いや、私が一緒に返しておきます!』

「どうせ職員室には行かんといけんのでな」

『あ、そうなんですね…それではお願いします』


田岡先生に鍵を渡した


「じゃあ気を付けて帰るんだよ」

『はい!あの本ッ当に、ありがとうございました!』

「うむ。……あ、苗字くん」

『は、はい』


行こうとした田岡先生が急に振り返るもんだからビクリと体が強張った


「今度、こっちの体育館で自主練をするといい」

『…え?』

「オレもこの時間までいる。君のシュート、見てやろう」


田岡先生はほんの少し口角を上げて言い放った
私は理解ができず、ポカーンとしてしまったがすぐにハッとして田岡先生に向き直った


『ありがとうございます!ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いします!』


また頭を下げる
田岡先生は下げている頭を撫でてくれた


「ココア…冷めないうちにな」


そう言って今度は本当に校舎の方へと行った

先生の優しさに心まで染み渡る
私は早速ココアを開けてゆっくり飲みながら帰路についた



明日は自主練、休もうと思ったんだけど…



『明日も頑張るぞーっ!ぅわちッ』



両手を上げるとココアが少し溢れ出た





Fin




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