企画用(短め)

□沢北✖同級生
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『いらっしゃいませ。お弁当、温めますか?』


学校終わりにコンビニでバイトが日課
バイトの人たちも気さくでレジも品出しもなかなか楽しい
タバコの銘柄だけは覚えられなくていつもあたふたするけどね…



コンビニの自動ドアが開くと音楽が鳴り、それに反応して自動ドアの方に顔を向けた


『いらっしゃ……あれ?沢北?』

「よっ、苗字」


片手をあげて私に「よっ」っと言ったのはクラスメイトの沢北栄治だった
服装を見るあたり、ジョギングをしていたみたいだ
沢北はしばらくコンビニ内をウロウロとしていた





『沢北』

「あー?」

『エロ本でも買いに来たの?』

「なッ!違うっつーの!」

『怪し〜』

「買うとしてもお前がいないコンビ二行くに決まってんだろ!」

『じゃあ違うコンビニで買う予定なんだ〜』

「ち、違うって…」


目を反らす沢北にクスクスと笑う
沢北ってなんでこんなにからかい甲斐があるんだろ


「もう上がり…だよな?」

『え?あ、そうだね。上がらなきゃ』

「外で待ってる」

『……えっ?』

「なんだよ…嫌か?」


口を尖らして拗ねる沢北に私はまた笑った


『ううん、まさか!じゃあすぐ帰る用意するね』

「おう」


私はタイムカードを押してロッカールームで着替えて裏口から外へ出た
出た瞬間、寒さに体が震えてマフラーを口元まで覆った
白い息を吐いて夜空を仰ぐ





『お待たせ―』

「おう」

『ごめんね、外で待ってもらっちゃって』

「全然。…じゃあ行こうぜ」


沢北は笑顔で私の隣に並んだ
そして2人で肩を並べて帰り道を歩く


「あ、そうだそうだ」


沢北はいつの間に買ったのかコンビニの袋をゴソゴソとし始めた


「お疲れ」


私にくれたのはホットミルクティー
それも私がよく買うメーカーのものだ


『え、いいの?』

「俺は甘いもん飲めねーし」

『ありがとう』

「…おん」


お礼を言うと照れた沢北につい吹き出してしまう

冷えた手を温かいペットボトルで温める
私が着替えてる間に買ってくれたと思うと嬉しくて、心まで温まるようだ
ゴクリと飲んでホッと一息をついた


『ねぇねぇ、これ飲んでみて?』

「え、ミルクティー?」

『うん!』


沢北の前に差し出すと、戸惑いながらミルクティーを飲んだ


「甘ぇ!!」

『ブフッ…美味しいのに』

「……………」


何故か照れくさそうに目を反らした


『沢北さ、私に言うことない?』

「は?苗字に言うこと?」

『うん』

「………………」


考える沢北に私はニヤニヤとして顔を覗く
それに気づき、ソッポを向いてしまった
なかなか何も言わない沢北に私が先に口を開いた


『私が上がる時間の前に来てくれて、私が上がるまで待ってくれて、それで私の好きなミルクティーを買ってくれた…。それで、私に何か言うことないの?』


沢北はまた少し考える素振りを見せて意を決したように私に向き直った
そんな沢北に私も向き合う


「えっと…俺が苗字のこと好きってことを言え…ってこと?」


真剣な顔をしたかと思ったのにへらへらと後頭部を掻きながら言い放つ沢北に思わず目を細める
だがしかし寒さからなのか、坊主頭で丸見えな耳が真っ赤っかで、それが目に入って思わずクスリと笑ってしまう


『それ、告白?』

「え……いや違う。あの、俺…」


もごもごとする沢北をジッと見つめると、また意を決したように私に向き直った



「苗字が…好きだ。付き合ってください…」


今度こそ真面目に告白をしてくれた沢北に微笑み返す


『私も好き…。よろしくお願いします』


沢北はパァッと嬉しそうに笑い、両手でガッツポーズをして喜んだ
私も嬉しくて、沢北に貰ったミルクティーを両手で握りしめた


『でもさ、私は好きって言ってって言ったんじゃないけどね?』

「えぇッ!?」

『さっき沢北がミルクティー飲んだでしょ?関節キスだから、そのことを言ってたんだけどな〜』


ニヤニヤとする私に沢北は真っ赤にした
口を尖らせて、また拗ねた


「で…でも結果オーライだ!」

『ぷくく…』


扱いやすい沢北に笑いが止まらない


「…でも覚えとけよ?」

『ん?』

「もう遠慮しない。やられたらやり返す。3倍にしてな」


そう言って沢北と私の距離がゼロになった






fin






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