企画用(短め)
□三井✖宮城✖後輩
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「おい、ここ違うだろ。」
「あれ?ここも違うよー。」
『……………』
何故こうなった。
わたしはただ洋平と一緒にテスト勉強をしようとしただけなのに…!
―――1時間前のこと…
今日からテスト1週間前に入った。
中学とは違って高校は、留年というものがある。
それを恐れたわたしは、幼馴染の洋平を巻き込んで一緒に勉強しようと思って洋平を探した。
あれやこれやと、洋平を探している間に三井先輩と宮城先輩に出くわしてしまった。
わたしは花道とも仲が良く、いつの間にか何かとこの2人によく絡まれるようになってしまい、何やってんだ?と声を掛けられたから、洋平を探している。と言えば、もう帰ったぞ。と三井先輩に言われて疑いの目を送ると…
「本当だっつーの…あれ見ろよ。」
三井先輩が指さす方を見れば、窓の向こうに見える校門からちょうど出ていく洋平が見えた。
『あああ!洋平!!』
窓に身を乗り出して、呼び止めようと試みるがどう考えても声が届くはずがなく、そしてその前に肩を掴まれて、強引に振り向かされた。
肩を掴んでいたのは宮城先輩で、振り向けば満面の笑みでわたしを見下ろしていた。
「さ!俺らと一緒に行こうか、苗字ちゃん?」
『…はい?』
「腹減ったしさっさと行こうぜー。」
『え、あの、はい?どこへ?』
「いいからいいから。」
『いや待って!?ちょ、ちょ!?』
そして、なんやかんやでファミレスに連れて来られたわたしは2人に勉強を見てもらっています…。
『なんで赤点軍団の2人にわたしは勉強を教えてもらってるのかな…。』
「俺よりバカだからだろ?」
『三井先輩の方がバカって噂ですよ…。』
「どこでそんな噂が飛びかってんだよ!」
ったく…。と眉を顰め、頬杖を付きながらチューッとストローを吸っている三井先輩は何だかんだドリンクバーを奢ってくれるらしく、良い先輩だ。
「苗字ちゃん、ここはさー……」
『ふむふむ…』
わからなくて進めない問題にぶち当たっていると教えてくれる宮城先輩は、勉強はやればできるらしく、何故、普段からやらずに赤点軍団に入っているのかが疑問だ。
そしてお気づきだと思うが…
わたしのことを""苗字ちゃん""と呼ぶ。
三井先輩は、ここが違う。と口出しするだけだが宮城先輩はちゃんと教えてくれる。
最初はどうなることかと思ったけど、連れて来られてよかった…かも?
『あれ…2人は勉強しなくていいの?』
「まぁ、何とかなるだろ。」
『どこからそんな自信が…』
呆れていると、三井先輩はパァッと嬉しそうな顔をして、何だと思っていると「ここ間違ってるぞ」と満面の笑みで言ってきやがった。満面の笑みで。
「バカだなぁ、お前はー。」
『堂々と答えを見ながら、間違ってるって嬉しそうに指摘する三井先輩よりはマシだと思う。』
「ぶわははは!間違いねぇ!」
「ンだと、お前ら!!!!」
ガタンと机から立ち上がる三井先輩に、たまたま通りかかった店員さんに白い目を送られて、三井先輩は見られた恥ずかしさに咳払いを一つ漏らして、ゆっくりと座りなおした。
「三井先輩、声が大きいんすよ。」
「う、うるせぇー!」
『ほらまたうるさい…』
「ぐ…っ」
いたたまれなさそうに目を泳がせた三井先輩はメニューを見つけて、腹減ったから何か頼むぞ!と言って早速、店員を呼んで注文をした。
「三井先輩。さっきの店員、可愛かったっすね。」
「あー?そうかー?俺は…あっちの店員のが好みだな。」
「おお、いいっすねー!」
『………………』
年上とはいえ、この人らも男子高校生だったなーなんて思い出して、店員を見てムフフな2人と一緒にいることがとても恥ずかしい。
「三井先輩は、巨乳派っすか?貧乳派?美乳派?」
「大きさなんて関係ねぇ…大事なのは形だ!」
「つまり美乳派っすね。」
「宮城、テメーはどうなんだ?」
「俺は…そうっすねー…」
わたしなんて放ったらかしで2人が話しに花を咲かせているその時…!!
「もちろん形は大事っすけど俺はやっぱそんなもんよりも感度の方が大事だと思いま…
「お待たせしました!こちら、ご注文の…」
「あ、…ハイ…」
「ドーモ…」
タイミング悪く現れた店員にバッチリ話しが聞こえていたみたいで、三井先輩と宮城先輩は顔を俯かせて、冷たい目をする店員の視線から逃れようとしていた。
「ごゆっくりどうぞ!」
最後は営業スマイルばりに満面の笑みで店員さんが去って行った。
「絶対に聞かれた!!絶対に!!」
「宮城お前、感度がどうとか言ってたな?」
「まだこの話し続けるんすか!?」
えっ。とキョトン顔の三井先輩は本当にどうしようもないと思う。
『つーか美少女の後輩の前でそんな話しをするのどうかと思うなー?』
「あ?美少女?どこだ、どこ。」
『コロス。』
「苗字ちゃんって見た目からして馬鹿そうだけど本当に馬鹿だったとはなー。」
『宮城先輩ほどじゃないですよぉ〜』
「なに…?」
ここへ来て、はじめてイラッとした様子を見せた宮城先輩だがわたしは一切、怯むことなく満面の笑みを送る。
口を開いた宮城先輩に何を言われるかと待ち構えていたら…。
「けどま…。俺は、馬鹿な苗字ちゃん可愛いと思うぜ?」
頬杖をついてニッコリと笑う宮城先輩に、わたしは開いた口が塞がらない。
「お、おま…!何言ってんだ、宮城!」
「何で三井先輩が顔、赤くしてんすか…」
「し、してねーよ!!!」
「声が大きいっすよ、三井先輩…」
また店員に睨まれる…!と三井先輩は慌てて口を閉じた。
そして何も反応できないわたしに、宮城先輩は気づいてジッ…と見つめられた。
「苗字ちゃんさぁ、普段あんまり可愛いとか言われないだろ。」
『……………』
確信をつく言い方に眉を顰めてしまい、そんなわたしを見て肯定と受け取った宮城先輩は口端をこれでもかというくらい上にあげた。
「俺と付き合ってみる?」
『え!?』
「はぁ!?」
「いいじゃん。な?」
『ちょっ…』
向かいに座っていた宮城先輩はわざわざ、わたしの隣に移動して詰め寄ってきた。
端っこへ逃げて距離を取ろうとすると…
「宮城お前、ふざけんな!」
「なんで三井先輩が出しゃばるんすか」
「出しゃばってねぇ!」
宮城先輩の腕を掴んで引っ張る三井先輩に心底、迷惑そうな顔をして仕方ないといった感じで立ち上がり、また向かいの席に座る宮城先輩。
だけど今度は、奥の席に座らされていた。
「言っとくけど俺だって…苗字のこと…」
『…?』
目を泳がせながら口をもごもごとする三井先輩に首を傾げて見せる…が、三井先輩はそのまま何も言わない。
宮城先輩にチラリと目を向けると、バッチリと目が合って微笑まれてしまった。
フイッと目を反らせば、くつくつと喉を鳴らしているのが聞こえる。
付き合ってみる?とかチャラついた告白の仕方されたの初めて、というか告白されたの初めて…というか…
本気のワケがない…?
『あれ。もしかして、わたし…。』
「ん?」
『からかわれてる!?』
これでもかってくらい目をかっ開いて宮城先輩を見つめると…
「さぁ…どうかな?」
あああ!からかわれていたんだな!!!?
あんな驚いた反応じゃなくて、『宮城先輩とお付き合い?そんなのお断りです。』とか格好つけて言ってやればよかった!ちくしょうめ!
「お、お前、苗字をからかってんじゃねーよ!!」
『ちょっと、三井先輩!?』
何故かキレた三井先輩は、宮城先輩の胸倉を掴んだ。どうしてそうなる!?
「いや、俺は苗字ちゃんのことからかってないっすよ。」
「あ!?」
「俺がからかってんのは、三井先輩っすよ。」
「……あ?」
『はい…?』
胸倉を掴まれながら三井先輩を指さす宮城先輩。
わたしも三井先輩もキョトン顔である。
「ったく…。素直になったらどうなんですか、三井先輩。」
「な、何言ってんだ、お前…」
「ぐずぐずしてたら、苗字ちゃんは俺が貰っちゃいますよ?」
「!?」
何やらコソコソと話していて、ガヤガヤとしている店内ではわたしの耳まで届かなかった。
三井先輩を押し退けた宮城先輩は、机の上にお金を置いて「お先でーす。」と言って、颯爽と帰ってしまった。
なんなんだ、あの人は…!
何がしたかったんだ!!
『なんだったの、宮城先輩!』
「……………」
『ねっ、三井先輩!!』
「……………」
『……三井先輩?』
賛同を求めているのに黙っている三井先輩。
どうした?この人…。
「苗字よぉ…」
『あ、はい?』
「宮城に告られてどう思った?」
『いやだから告白じゃないでしょ、あれは…』
もしあれが本気だったとしても、まずは「好き」という言葉が欲しいよね。
だって「付き合ってみる?」とか女なら誰でもいいような言い方だし…。
「苗字。」
『はい?』
「付き合うか、俺たち…。」
『…は?』
三井先輩まで、からかうのか…。
なんつー先輩たちだよ、まったく!!!
『三井先輩まで、からかわないでよ…。』
「からかってねーっつーの。」
『…?』
「お前が好きなんだよ、バーカ…。」
顔が真っ赤な三井先輩に、あれ?これ本気の告白?…と思うと同時に…。
『あの…""バーカ""は言わなきゃダメだったんですかね…?』
「う、うるせぇ、バカ!!」
『普通、好きな人に対して""バカ""とか言うかなぁ??』
「お前は、バカなところが可愛いからいいんだよ…!」
わたしと三井先輩がバカップルになるまではそう遠くない話しかもしれませんね。
Fin