企画用(短め)

□宮城✖先輩
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ついに負けた。
負けてしまった。

連日連夜、今回の大きなプロジェクトのために企画を練った。
完璧にできあがった企画をお偉いさん方の前で自信満々にプレゼンした。

私が作った企画は積み上げてきたキャリアにより、よく採用されていた。
今回も私は大いに期待され、そして誰もがまた私の企画が通るかと思われた。

けれど、だ。
私の企画は通らなかった。
慢心することなく、ご飯を作る時も食べる時もお風呂に入っている時もトイレにいる時もこの企画のことを考えた。何度も何度も書き直して、そして納得のできるものができた。


『いける、今回もいける…!』


けどそれは………

―――「宮城くん…!この斬新な考え!いいじゃないか!」
―――「苗字くんの企画もよかったけど…宮城くんの案がうまくいけばこれは凄いことになるぞ…!」


後輩の宮城リョータ。
何故か今回、企画案に参加した子。



「あ、名前さん。ここにいたんすか。」

『……………』

「あれ?泣いてるんすか?」

『……うるさい。出てって。』



後輩に負け、情けなくて悔しくて、今日は使用しない会議室に入ってドアを閉めた途端に私は膝から崩れ落ち、そして意思に反して止めどなく溢れる涙。
すぐにデスクに戻って仕事をしようと思った私は何とか気持ちを抑えようとしていた。

そこで現れた宮城くん…。
宮城くんの企画は私から見ても魅力的なものだった。
誰もが取り組みたいと思える企画だった。

私が過去に斬新な案を出した時は””見込みがない””と落とされ、それからは確実な企画しか作ってこなかった。
斬新だけではいけない。成功した時の報酬、話題性、何もかも宮城くんの企画は良かった。



「とにもかくにも、この勝負は俺の勝ーち。約束覚えてますよね?俺が勝ったらご褒美くれるってやつ」



私の頬を撫でて見下ろしながら告げた宮城くんに悔しさがこみ上げて下唇を噛む。


―――「今度のプレゼン、俺の企画が通ったらご褒美ください」
―――「勝負っすよ、名前さん」


納涼会の時に、お酒が入った私に持ちかけた勝負だった。
軽率にいいよ〜なんて返事をしてしまったその時の自分を恨む。
だがしかし、お酒が入った意思判断能力に欠ける状態の決め事はなかったことにできるはず…?



『あの時は、お酒が入ってたから約束の効力はない、ということで…』



この会議室を出ようとドアノブに手を掛けた。

だがドアノブに掛けている手を掴まれ、背後から伸びてきた手はドアの扉を抑えた。



「どこ行くんすか?逃がしませんよ」



ドアと宮城くんに挟まれて逃げ場を失ってしまった。


「ご褒美…何してもらおっかな…」


背後から耳元で囁かれた声に私の背筋が凍る。

だがその後、何が起こるワケでもなくただ静かに時間が過ぎていき、おかしく思った私が『宮城くん…?』とゆっくり後ろを振り返ると途端に、宮城くんの全体重が私の身体にのしかかった。



『宮城くん!?宮城くん!!!!』





*******





『疲労と睡眠不足!?』

「しばらく寝てたら治るわよ。」



救護室へと運ばれた宮城くんが突然倒れた原因は疲労と睡眠不足。
いつも元気な宮城くんからは想像ができず、あっけからんとする。



「そういえばコイツ、最近付き合い悪かったもんなー」
「部長にすんげー頼み込んで参加した企画だから、寝ずに考えたんだろうな」



宮城くんを運んでくれた同期の子たちの会話を聞きながら私は救護室を後にした。

倒れるほど考えた企画。
私だって喉から手が出るほどに通したかった企画。

ご褒美…あげてもいいかな…。














『ご褒美、何がいいの?』

「え!!いいんすか!!」



仕事が終わり、救護室に行くとちょうど目が覚めた宮城くんがいた。
帰り支度をしながら告げると嬉しそうにパァッと顔を上げて私に振り返った。



「えっと…じゃあ…じゃあ…」



嬉しそうな顔で考える宮城くんに思わず吹き出しそうになりながら彼の言葉を待った。



「今日から1週間、名前さんの部屋に泊めてください!」

『それ以外で。』



真顔に戻った私はキッパリと断った。
私たちの会社には社宅があって、多くの独身社員がそのアパートの社宅に住んでいる。
だから部屋に来ることは容易である。



「だって…ほんっと大変だったんすよ、この企画…名前さんに癒されてぇっす…」

『だからって泊まるのはダメでしょ。』

「何もしませんから…俺はただ1人で居たくねぇーだけっすから…!」



そ、そこまで言うなら…
仕方ないなぁ、泊めてあげるか…










なーんてことになるワケはなく、夕飯を作って私の部屋で2人で食べた。

ただそれだけのこと。食べた後は帰ってもらう。

そう、それで終わり。

このあとの続きは、また別のお話しで…




Fina


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