企画用(短め)
□魚住✖後輩
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「いいっすか?魚住さん。」
「お、おう…」
「俺らが、魚住さんと苗字を2人きりにするチャンスを作るんで、ばっちし告白しちゃってください!」
「わ、わかった…」
今日も今日とて、陵南高校バスケ部は猛練習である。
IH予選が着実と近づいてきており、監督はもちろん部員も気合が入っている。
だがそんな最中、好きな相手に告白をすると決めた男がいる。
そう、それが魚住純。
なかなか自信が持てず、告白へと踏み出すことのできない魚住の背中を押したのは同じバスケ部の後輩たち。
IH予選前ということもあって応援してくれる後輩たちに、””気持ちは有難いが…””と断った魚住であるが、後輩はとある告白の必勝法を魚住に話した。
その必勝法は、予選前でしか使えない方法である。
部活が終わってからも家で頭を悩ませた魚住は結局、後輩たちに協力してもらうことにした。
―――そして運命の日
「なぁー、マネージャー。」
『ん?』
「魚住さんが体育倉庫に行ったきり帰ってこねーんだよ」
『魚住さんが?』
「ああ…悪いけど様子見に行ってくれるか?」
『わかった』
マネージャーである名前はすぐに了承して体育倉庫へと直行した。
“”何か探してるのかな…””とブツブツと呟きながら向かう名前は、後ろにコッソリとついてきている部員に気づかない。
『魚住さーん?何を探してるんですか?』
「お、おう、苗字…植草がコンタクトを落としたらしくて…さ、探しているんだ」
吃る怪しい魚住に気づくことなく、名前は『一緒に探します!』と床に這いつくばって植草のコンタクトを一緒に探し始めた。
魚住は嘘をついたことに僅かな罪悪感を抱きながらも嘘がバレないようにコンタクトを探し続けるフリをする。
―――ガラガラガラ……ガン!
扉がゆっくりと閉まり、鍵が閉められた。
その音に名前も魚住もゆっくりと顔を上げて扉を見つめた。
すぐに理解できない[FN:名前]はその場から動くことなく、ジッとしている。
そんな名前を見つめ、罪悪感を抱かずにはいられない魚住は立ち上がり、床に這いつくばったまま動かない名前に手を差し伸べた。
『…魚住さん?』
「すまん。コンタクトを探しているのは嘘だ…」
『え?嘘?』
顔を上げて這いつくばっている体勢から正座へと変更をした名前は首を傾げた。
“”すまん””ともう一度謝って考える素振りをする名前の前にもう1度、分かりやすく顔の前に手を差し伸べた。
ハッとした名前はすぐにその大きな手を掴んで立ち上がる。
「お前と2人で話しがしたくてな…」
『えっ…』
さすがにこの状況でそう言われてしまえば、勘づいてしまった名前は徐々に顔を赤くした。
そんな名前に釣られて魚住も顔を真っ赤にする。
体育倉庫で2人、顔が真っ赤っかである。
試合前でもこんなに緊張しないのに…と魚住はバクバクとうるさい心臓が気になりながら照れ隠しに後頭部をガシガシと掻いた。
沈黙が続く中、魚住は意を決して後輩に託された告白の必勝法を実践することにした。
「苗字…!」
『は、はいッ!!』
ビクリと肩をビクつかせた名前は俯いていた顔を上げて魚住を見据えた。
「IHへの切符を手にしたら…俺と付き合ってくれ!」
意を決して告げた魚住。
…だが、名前はキョトンとした顔をした。
「………(必勝法じゃなかったのか?!)」
サッカー選手が「明日の試合でゴール決めたらデートしてくれ」や、野球選手が「ホームランを打ったら結婚してくれ」などの口説き文句をよくテレビで聞く。
スポーツをやっている者ならではの口説き文句だ。
それを後輩から伝授されたわけであるが…
名前の反応は微妙だ。
魚住は頭を抱えたくなるも必死に堪えながら名前の言葉をドキドキとしながら待った。
『私はそんな告白じゃ堕ちませんよ…?』
なにィーーーー!?と叫びたい魚住であるが、片思いの相手の前でそんなことが出来るはずもなく、だがしかしショックを受けた顔は隠しきれていない。
そんな魚住を知ってか知らずか、名前はグイッと魚住に近づいて顔を覗いた。
口はムッとしていながら上目遣いの名前に魚住は耳を赤くした。
『魚住さんは私が好きなんですか?』
「なッ!!?」
『私は、試合に勝ったら、とかそういうのは好きじゃないです。』
「ぐっ…」
『好きなら好きって言って欲しいです。』
ジッ…と見つめる名前。
つい視線を反らす魚住であるが、先ほどよりは抑まっているとはいえ名前の頬はほんのり赤い。
「俺は苗字が、好きだ。」
『……………』
「俺と付き合ってくれないか」
言い切った魚住に、名前はにっこりと微笑んだ。
『はい!』
名前の返事を聞いて心底、安心したと同時に嬉しさに思わず天井を見上げてフーッと息を漏らした。
『魚住さん魚住さん!』
「ん?」
クイックイッと魚住のシャツを引っ張る[FN:名前]に、'""可愛い…!""と魚住は心の中で悶えながら平然を装って、幾分も自分より小さな自分の彼女となった名前を見下ろした。
『もう1回言ってください!』
「何をだ?」
『好きだってやつですよ!』
「なにィ!?」
まさかのおねだりに鼻が出そうになるのを堪える。
またあんな恥ずかしい思いをせにゃならんのか…!と心臓がいくつあっても足りないと思いながら魚住が名前の願い通りもう1度言おうとしたが…。
「苗字は言ってくれないのか…?」
『え。』
「俺のことが好きだって…言ってくれないのか…?」
眉を下げて少し残念がりながら聞く魚住に名前はゴクリと生唾を飲んだ。
『魚住さんのことは…好きじゃないです。』
えーーーー!と目ん玉が飛び出そうになるほど大きく開かれた魚住の目に名前がクスクスと笑う。
『嘘に決まってるなじゃないですか!大好きですよ、魚住さんのこと!』
大好きだ、と言われて嬉しいはずなのに嘘をつかれたことに戸惑いを隠せない魚住にまた名前はクスクスと笑い、『呼び出すためとはいえ、私に嘘をついた仕返しです』と告げた。
どうやら植草がコンタクトを落としたから探しているんだという魚住がついた嘘のことを言っているようだ。
「す、すまんかった…」
『私たちは今日から彼氏彼女なんですから』
「!」
『これからはお互い、嘘はなしですよ?』
「も、もちろんだ!!」
幸あれ
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