薔薇の道

□始まり
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時間軸はアニメ四期終了後です。


小さい頃から時々、変なものを見た。他の人には見えないらしいそれらは、おそらく妖怪と呼ばれるものの類

 

ガサッガサガサ

 

夏目「はぁはぁ…」

 

おれは今、森を走っている。理由は…

 

妖「友人帳…友人帳をよこせ!」

 

ガサッ

 

そう、妖怪に追いかけられているからだ。

 

夏目「はぁはぁ…しつこい!友人帳は、渡さないって言ってるだろ!」

 

友人帳。それは、祖母、夏目レイコの遺品でレイコさんが負かした妖怪の名前が書かれている。多くの妖の名を預かったそれを継いで以来、名を返してほしい妖やその力を欲する妖に追われている。今回は後者だ。

 

夏目「はぁはぁ…こんな時に用心棒は何やって…うわっ!」

 

ずるっ

ごすっ

 

夏目「痛っ!」

 

どうやら、走っている途中で足を滑らしてしまったようだ。

 

ガサササ

 

妖「おのれ、人の子め。どこに行きよった」

 

夏目「ふぅ。」

 

どうやら、諦めてくれたみたいだ。早く帰らなくては、塔子さんに心配をかけてしまう。

 

ガササ

 

やばい、何かいる。さっきの妖か…

 

田沼「夏目?どうしたんだ、こんな所で」

 

夏目「田沼!田沼こそどうして…」

 

田沼「どうしてって…家に帰るためだけど…」

 

まずい。どうやら、気付かないうちに八ツ原のほうに来てしまっていたようだ。

 

夏目「あ、悪い。じゃ、またな」

 

田沼はおれが妖怪が見えることを知っている友人だ。田沼を危険なことに巻き込む前にここを離れなくてはいけない。そう思い、急いで離れようとするが…

 

がしっ

 

夏目「!?」

 

田沼「また、妖怪に追われてるのか?」

 

巻き込んではだめだ。大切な友人を巻き込みたくない。それに…おれは田沼のことを…

いけない、こんなこと、思ってはだめだ。それよりも、早くここをはなれなきゃ。

 

夏目「違うよ。ニャンコ先生を探してるだけなんだ。だから、おれはもう…」

 

行くよ。そう告げようとしたがそれは叶わなかった。田沼が手を引っ張って急に歩き始めたからだ。

 

夏目「たっ田沼?!なにして…」

 

田沼「本当は妖に追われてるんだろ?つかなくていい嘘はつくなって前もいったろ。」

 

何で…

 

夏目「なんで、そんなこと…」

 

田沼「なんで、そんなことがわかるのか?って聞きたいのか?」

 

おれは頷いた。なんで、田沼はおれが嘘を吐いてるってわかったのだろうか。

 

田沼「見てたら分かるよ。夏目の今の顔、俺を巻き込まないようにしなきゃって顔してるぞ」

 

夏目「え…そんなにわかりやすいか?」

 

だとしたら、あまり良くない。周りの人たちに心配をかけてしまうどころか巻き込んでしまうかもしれない。

 

田沼「他の人はどうだか知らないけど、俺はわかるよ。だって…」

 

田沼が歩くのを止めてこちらに顔を向ける。

 

夏目「田沼?」

 

田沼「…俺は、夏目のことが好きだから。ずっと見てたから、夏目が周りの人たちを巻き込まないように嘘をついている時、どんな顔してるかわかるんだ。」

 

夏目「え?」

 

聞き間違いだろうか。今、田沼はおれのことを好きって言わなかったか?そんなことありえるはずが…

 

田沼「聞き間違いじゃないよ。」

 

夏目「え?なんで、おれの思ってることを…。」

まさか、顔に出てたのか?けど、だからと言ってそんなに簡単にわかるものなのか?

 

夏目があれこれと、考えている姿を見て田沼がくすくすと笑う。

 

田沼「声に出てたぞ、夏目。」

 

夏目「え?えっと…」

 

田沼「ごめんな、急にこんなこと言い出して。本当はこんなこと、言うつもりじゃなかったんだ。」

 

笑うのを止め、切なそうにいう田沼におれは何と言えばいいのかわからなくなった。

 

田沼「気持ち悪いだろ?男の俺が男の夏目にこんな感情を抱くなんてさ。せっかく、友達になれたのにさ」

 

乾いた笑みを浮かべながらいう田沼に自分の胸が苦しくなっていくのがわかる。なにも、田沼だけがそういう感情を抱いているわけじゃない。

 

夏目「田沼…。一つ聞いていいか?それは、友情を恋と間違えてる可能性はないか?」

 

夏目はそうであってほしい反面、そうでなければいいとも思ってしまう自分を恨めしく思いながら問うた。

 

田沼「確かに、俺も最初はそう思ったよ。だから、ずっと自分を誤魔化し続けてきた。けど、名取さんと仲がいいって知って、その姿を目の当たりにしてなんとも言えない焦燥感っていうのかな、自分が名取さんに嫉妬してることに気づいたんだ。」

 

夏目「………」

 

田沼「なんで、俺には見る力がないんだろうって。こんな中途半端な力しかなくて、夏目を守りたいのに守るどころか、足手まといにしかならない。」

 

夏目「そんなこと!田沼が足手まといだなんて思ったことない!おれは、いつも田沼に助けられてるんだ!」

 

田沼「夏目。」

 

無理しなくていい。田沼の顔はそう言いたげだったが夏目は無視をした。

 

夏目「危ない目にあわせたくないのに巻き込んだり、迷惑掛けてしまうのは嫌なんだ。だから、嘘をついてしまう。でも、田沼が吐かなくていい嘘はつくなっていってくれて、嬉しかった。ビンに詰められて出れなくなったときに、助けてくれてすごく嬉しかった。けど、なによりも田沼が傷つくのが怖かったんだ。」

 
自分が大切に思えば思うほど、無くすことが、傷つくことが怖い……。



田沼「……」

 

夏目「今まで、大切なものは作らないようにしてたんだ。けど、ここにきてからは、大切なものがたくさんできた。でも、自分が大切だと思うことで誰かが傷つくなんて嫌だ。嫌なんだ。なのにっ………田沼はずるい…。」

 

田沼「え?夏目?」

 

急に、訳のわからないことを言い出した夏目に田沼は困惑してしまう。

 

夏目「田沼は人の気も知らずに言うだけ言って…。おれだって、田沼のことずっと前から…す、すk」

 

好きなのに!と言おうとしたが最後までは紡げなかった。夏目が田沼に抱き締められたからだ。

 

田沼「なぁ、夏目。そんなこと言ったら俺、勘違いするかも。もっと、夏目を求めていいんだって、思ってしまう。」

 

夏目「勘違いも何も、おれは、田沼のことが…」

 

田沼「好きだ。」

 

夏目「!?」

 

田沼「夏目のことが好き。好き過ぎておかしくなりそうなくらい、夏目が好きだ。」

 

田沼の突然な発言に夏目は恥ずかしいやら、嬉しいやらで顔が赤く染まっていくのがわかった。

 

夏目「おれも、おれも田沼のことが好きだ…////////////」

 

田沼「俺は妖怪が見えるわけじゃない。夏目を助けたくても足手まといにしかならないかもしれない。けど、誰よりも夏目を幸せにしたいんだ。他でもない自分のこの手で。だから、俺と付き合ってください!」

 

夏目「おれこそ、たくさん迷惑かけるかもしれない。それでも良いなら…よろしくお願いします////////////」

 

田沼「ああ、俺的にはもっと頼ってくれたら嬉しいかな。」

 

 田沼の暖かいその言葉に、その思いにおれの中の何かが救われた様な気がした。
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