らんま

□君に夢中
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「そこの彼女?」

あ、そっちの君も!と校舎の廊下を通り過ぎる女子生徒を見つけては声をかける剣道着姿のあの男。それと同時に女子生徒達の叫びと怒りの声。…あの自意識過剰男め。


そう、この自意識過剰かつ思い込みの激しい男…久能帯刀は私の幼少期からの幼馴染である。


「ちょっと、名前!?九能君何とかしてよ!」


今日も女子更衣室の前で女子達を追いかけ回していたの!とクラスの生徒が言うとそうよそうよ!幼馴染みなんだから!と理不尽な理由で帯刀の制御を頼み込まれた。クラスの女子達に勢いよく言われてしまえば従わなければいけないものである。なびきの妹のあかねちゃんに抱きつこうとしている帯刀を捕まえようと私はしぶしぶ廊下へ出た。なびきはどこか少し楽しそうな顔を一瞬私に見せた。


(なびきのやつ…)


『ちょっと!帯刀!あかねちゃん嫌がってるんだからいい加減にしなさいよね!』


剣道着の首元を後ろから掴んでもこの男はお構い無しに言葉を続ける。


「なんだ名前。ヤキモチか?」
『誰があんたなんかに。いいから、大人しく教室に戻って早く席に座りなさい。』


と、こうしていつものようにしぶしぶ帯刀は席につく。

午前の授業が終わって私はなびきとお昼を取ろうとしたらなんでも用事があるとか何とかでなびきはいそいそと何処かへ行ってしまった。また男子達に写真を売りつけるのね…。


『今日のお昼は仕方なく1人ね…』

諦めて屋上へ向かう途中、あかねちゃんの許嫁である早乙女君に出会った。

「メシ、1人なの?」
『え?そうだけど…」
「なら話が早いな!俺と食わね?」

1人で食べるのも寂しかったし、その日のお昼は早乙女君と一緒に食べた。色んな話を聞かせてくれる早乙女君は面白くて楽しくて、なんだか時間が早く過ぎていったように感じて、その時間の終わりを知らせたのは午後の始業のチャイムだった。

「いっけね、あかねに怒られちまう!」

そう言って早乙女君とは解散。早乙女君はずば抜けた運動神経と華麗な身のこなしで屋上を飛び降り、窓からするりと教室へ入ってしまったので、私も慌てて階段を駆け降りようとすると、誰かに腕を引かれた。


「おい。今何してた?」
『何って…早乙女君とお昼ご飯食べてただけだけど?』
「その割には随分楽しそうだったじゃないか?」
『いいじゃない別に。帯刀には関係ないでしょー?』


何言ってるんだか。そう言って早く戻るよと声をかけても手を離してくれる気配はない。珍しく真剣な顔をしている帯刀に拍子抜けしてしまう程。


『早く教室に戻らないと…!?』


何も言わないまま帯刀に階段の壁に追いやられ、私は壁と背中合わせで目の前には帯刀のよく見ると整った顔。


「だめだ。」


何も言わなかった帯刀がようやく口を開いたと思えばだめだと一言。


『は!?なにがよ?』
「だから、他の男なんて俺は許さん。」
『…はぁ?』

女好きのあんたがよく言うわと呆れて憎まれ口を叩くと、少し間を開けてから照れたようにそっぽ向いた帯刀が小さく吐き出すように言う。


「…ただ、名前に妬いて欲しくてだな…その。」


赤くなる帯刀が珍しくておかしくてつい吹き出してしまう。


『ふふ、なにそれっ』
「だから!お前が好きなんだと言っているだろう!!」


そういってどこから出したのか分からないけれど、差し出された1輪の丁寧にラッピングされた黄色いバラ。


「…こういうことだ。」
『ね、もうちょっと授業抜け出そうよ?2人で怒られよ?』


私よりずっと背の高い帯刀と肩を並べて階段に腰を下ろす。


『意外とぶっきらぼうなんだね!ね、帯刀、私も好きだよ?』
「…もう早乙女乱馬の魔の手からお前は指一本触れさせん。他の男も。』


そう言って私を抱き寄せた帯刀。ずっとしてほしくて、されたくて女の子を追いかけていたんだね。と思うと子供っぽい帯刀が少し可愛く思えた。




(君に嫉妬)



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