《夢100》夢小説

□嫉妬。
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アルストリア城内。

今日も朝早くから王子のアヴィと兵たちが鍛錬をしている。

毎日欠かさず行い、戦力の向上だけでは無く、兵達の士気を高めるために必要不可欠な日課だ。



一通り終わり、解散の号令を掛ける。
皆汗を拭きながら散っていく。

その中で2人の兵士が何やら話し込んでいて、さり気なく耳を傾ける。





兵士1「可憐だ…。」

兵士2「ああ…本当に。」

兵士1「俺も、あんな風にしてもらいたい!」

兵士2「ははは!」



アヴィ(…なんの話だ??)



アヴィは首を傾げながら兵士達の視線の先を見る。


アヴィ(っ!!名無しさん?!)


どこからか入ってきた野良猫にミルクをあげている様だった。
野良猫はまだ小さく、名無しさんに懐いている様で、足に尻尾を絡ませたり頭を擦り付けたりしていた。
名無しさんは、そんな仔猫を愛おしげに見つめて、ニコニコしながら頭を撫でている。

その笑顔にアヴィも見惚れる…。






アヴィ(…っ!じゃなくて!!)

アヴィは名無しさんに見惚れる兵士達に怒りの視線をぶつける。
何を想像しているのか、よく見れば鼻の下が伸びている…。
アヴィのこめかみの血管がプチンッと音を立てて切れた。


ズンズンと兵士達に歩み寄り、
背後に仁王立ちする。


アヴィ「おい…お前ら…」


その声にビクッと肩をすくめ、兵士2人がゆっくりと青ざめた顔で振り向く。


兵士1、2「あ…アヴィ…王子……!」


アヴィ「…まだまだ体力有り余ってそうじゃねぇか…」


にこやかに言うアヴィだが、その笑顔は恐ろしい程に引きつり、彼の背後には負のオーラが見える。


兵士1、2「ひぃ!!」

兵士2人の表情はこの世の終わりを見たかの様な怯え様だった。


アヴィ「お前らは追加で…素振り100本だ!!」


兵士1、2「はいぃいっ!!」

兵士達は一目散に走り出し、ペナルティーの素振り100本を始めた。





情けない兵士達の背中を見て、アヴィは深く息をついた。


アヴィ「全く……」


名無しさんに視線を戻すと、相変わらず仔猫と戯れている。
仔猫を優しく抱き上げて指で顎を撫でてやると、仔猫は気持ち良さそうに目を細めた。




可愛くて優しくて、いつも笑顔の名無しさんに、兵士があんな風になるのも分からなくはない。
自分だってその魅力の虜になっている訳だから。

だからと言って自分以外の男が、下心丸出しの視線を名無しさんに向けるのは許せたものじゃない。

ましてや鼻の下を伸ばす様な内容の想像…。
またアヴィのこめかみがピクピクし始める。


アヴィ「………やっぱり1発殴る…」


そう言って踏み出すと、足元の枝を踏んで音がなり、
名無しさんに抱かれていた仔猫をがピクッとこちらを見た。

それに気付いた名無しさんが仔猫の視線を辿り、やがて目が合う。



名無しさん「あっ!アヴィ!」


アヴィ「…あ…。おはよ…」




特別悪い事などしていないのに、何故か見つかってしまった様な気まずい気分になった。




名無しさん「おはよう!今日も鍛錬、お疲れ様!」




そう言って名無しさんは、手で抱いている仔猫の前足を持ち上げ、笑顔でこちらに振っている。



アヴィ(なっ!なんだ…その可愛い行動はっ!?)




途端にアヴィは自分の頬が急激に熱くなるのを感じ、顔を逸らした。


アヴィ「…ああ…。じ、じゃぁ!」


それだけ言って背を向け足早にその場を去った。





名無しさん「あ、アヴィ!……行っちゃった。…何か気に障る事しちゃったのかな……?」


突然顔を背けて去って行ったアヴィの後ろ姿を、少し悲しげに見つめる名無しさん。
そんな名無しさんを仔猫は見上げ、自分の前足を優しく握る手を舐めた。


名無しさん「ふふ…。後でアヴィとお話して聞いてみるよ。」


そう言って名無しさんは仔猫に微笑む。
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