《夢100》夢小説

□花畑の待ち人
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瞼を閉じていても周りが明るいのがわかって
ゆっくり目を開けると、
優しい朝の日差しが白いレースのカーテンから差し込んでいた。

ベッドから降り、
窓を開けると少しひんやりしていて
清々しい空気を深く吸い込んだ。



名無しさん「ん〜!いいお天気!」


空を見上げると雲ひとつなく
どこまでも澄んだ青が広がっていた。
そして空を見上げながら、名無しさんは考えていた。

名無しさん「今日…アピスさんとお散歩出来るかな?」


そう思いながら、
自分の口元が緩んだことに気づかず、
ぼーっと想い人のことを考えている中…


名無しさん「………あ。」



名無しさんは思い出してしまった。


今自分の頭の中をいっぱいにしている
その人が………

今日は1日公務で忙しくなる。
と、言っていたのを。




名無しさん「……そうだった…。」


先ほどとは打って変わり、
肩を落としてしゅんとした表情になる。


アピスは王子として知識もあり品もあり、
彼の母親が溺愛するのも、少し共感できてしまうほど、素敵な人だ。
そして、異性でもつい《綺麗》と思ってしまうくらい、整った顔立ちをしている。

彼の何気ない仕草や、立ち振る舞いにも
つい視線を奪われてしまうこともしばしば。

その度に
「なんて間抜けな顔してるの」

と、意地悪な笑顔でからかわれる。



考えれば考えるほど
頭の中がどんどん彼でいっぱいになり、
そんな自分が恥ずかしくて
頬が熱くなっていくのがわかった。





朝食を済ませて、お城の中や中庭を散歩がてら歩き回ってみたが、やっぱりアピスの事が気になってしまう。

中庭のベンチに腰掛け、またアピスの事を考えていた。





名無しさん「……アピスさん、きっとまだまだお仕事、終わらないよね…。」


小さく息をついて数秒、
ふと、ある場所が浮かんだ。

ベンチから立ち上がりその場所へ向かう。





着いた場所は…

前にアピスが無理をして体調を崩した時、
気分転換に連れ出して欲しいと
アピスの母親に頼まれて訪れた花畑。


一面に色とりどりの花々が咲いていて
風に花の香りが運ばれて胸いっぱいになった。
日の光を浴びどれもキラキラ輝いて
より一層美しく見える。

名無しさん「きれいだなぁ。」


足元に咲く花に触れながらポツリと呟く。

その場にしゃがみ込み、
花の香りを楽しんだり、日向ぼっこしたり
名無しさんはゆったりとした時間を過ごす。

しばらくして、日差しが強くなってきたのか
少し暑さを感じて周りを見渡すと、
前にも見た大きな木があった。
姫は立ち上がりその木の下へ向かう。



名無しさん「…あの時も、こんな風にアピスさんとこの木の所へ来たんだ…。」



木陰に入ると生い茂った枝のおかげで
眩しい陽射しから逃れられた。
木の幹にもたれかかるように座って見上げると、風に揺れる木漏れ日の光がきれいで
しばらく見とれていた。



名無しさん「また…アピスさんと来たいな…。」



あの日、それまで人に触れられることを拒んでいた彼が、私の手を引いてここまで来て…
そして…
優しく抱き締めてくれた。
間近で見た彼の顔はやっぱりとても綺麗で、
金色の瞳を細めて微笑んで…
彼の腕の中はとてもあたたかくて、
そっと髪を撫でてもらったのも心地よくて…



あの日の事を思い出すうちに
ますます彼が恋しくなっていく。


優しく風が髪を揺らして
心地よさを感じながら、
目を閉じてアピスへの想いを馳せる。
そうしているうちに、名無しさんはそのまま寝息を立て始めた。
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