《夢100》夢小説

□嫉妬。
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あれから数時間が経ち、アヴィは自室をウロウロと歩き回っていた。


アヴィ「…あんな素っ気ない態度…悪かったよなぁ…。あいつ…気にしてるよなぁ…」



先程からあの時の自分の行動に後悔し、名無しさんに謝ろうとは思っているものの…


アヴィ「けど…まさか、見惚れてた…なんて…言えねぇし…!」


アヴィ「でもこのままじゃ、変に勘違いさせたままだし……」



そうブツブツと独り言を言いながら、ぐるぐると部屋を歩き回り、やがてピタリと足を止め、顔を上げる。


アヴィ「…あーもー!こんなの俺らしくない!よし…ちゃんと謝ろう。」



決意を固めたアヴィは、部屋を出て名無しさんを探し始めた。

名無しさんの自室は留守で、城内を探し回る。
中庭に出るとベンチに彼女が座っていた。


声を掛けようと歩き出すと、彼女の足元から仔猫の鳴き声がした。

アヴィ(あ…今朝の仔猫か…)


仔猫は名無しさんを見上げ、彼女の膝の上に飛び乗った。そしてそのまま膝の上で丸くなり目を閉じた。
名無しさんはそんな仔猫の背中を優しく撫でて微笑んでいる。




アヴィはその姿にまた魅入ってしまう。


アヴィ「………いいな…」


心の声が無意識に外へ出てしまい、
ハッと口を手で押さえたが、既に手遅れで、その声で名無しさんがこちらに気付き、視線を向けてきた。



名無しさん「あっ、アヴィ!」

アヴィ(今のは流石に気まずいッ!…でもこれで逃げたら、またこいつを傷付けちまう…)



頬を少し染めながらも、名無しさんの事を思い、その場から動けずいると、名無しさんが微笑みながら話し掛けてきた。



名無しさん「アヴィも座ろう??」


そう言って少し横に体をずらし、手招きしている。
アヴィは気まずさを感じながらも歩み寄り、名無しさんの隣に腰掛けた。

少し沈黙して名無しさんが口を開く。


名無しさん「アヴィ、今朝私、何かアヴィの気に障る様な事をしてしまってたら、ごめんね?」


名無しさんは申し訳なさそうな表情でアヴィの顔を覗く。


アヴィ「いや!あれは違うんだ!お前が謝る必要なんてない!」


アヴィの焦り様に名無しさんはきょとんとした表情で首を傾げた。

名無しさん「そう、なの?…じゃ、何かあったの??」

アヴィ「…あ…、それは…だな…」


いい篭るアヴィを名無しさんは不思議そうに見つめている。


アヴィ(…どっ、どうすりゃいいんだ…!)


顔を引きつらせながら、どう説明するべきか頭の中でグルグル考える。



すると、名無しさんの膝の上に居た仔猫が体を起こし、アヴィの側に寄る。

アヴィ「!」


仔猫がはアヴィの腕に顔を擦り寄せ、そのまま今度はアヴィの膝の上に乗り丸くなった。


アヴィ「…えっ、おい…」

予想外の出来事にアヴィは混乱している。
それを見た名無しさんがクスクスと笑った。

名無しさん「アヴィのお膝が良いみたいだね?」


仔猫はゴロゴロと喉を鳴らしながら寝息を立て始めた。
アヴィはその小さな体をどう扱って良いか分からず戸惑っている様だった。


名無しさん「優しく撫でてあげて?とっても喜ぶよ。」

アヴィ「あ……ああ。」


そっと触れると、仔猫のふわふわした毛並みと温かい体温が心地よかった。
言われた様に撫でてやると、気持ちがいいのか小さく鳴いて撫でている手に顔を擦り付ける。


アヴィ(…か、可愛い…)


名無しさんがあんな表情でこの仔を撫でて居た気持ちがよく分かる。
自然とアヴィの口元も緩んだ。








名無しさん「………いいなぁ…」

アヴィ(…え?)


ポツリと放たれた彼女の言葉に驚き、
視線を移すと、ハッとした顔をしており、
手で口を押さえていた。


アヴィ「……いいな…って…?」


言葉の意味を知りたくて、聞き返してしまう。
彼女の頬は赤く色づいていた。




名無しさん「………その、猫ちゃん…アヴィに撫でてもらえて……羨ましいな…って…」


その紡がれた言葉にアヴィは目を見開く。


アヴィ(…それって、俺と…同じじゃないか…!)



アヴィ「…お、俺っ!」


咄嗟に名無しさんの手を握り、素直に言おうと声を上げた時、
その大きな声に驚いた様子で仔猫が起き上がり、後ろ足で耳を掻いた。



アヴィ「…あ……悪い…デカイ声出して…」


そう申し訳なさそうに言うアヴィの顔を見上げ、一声鳴くと膝から地面に飛び降り、軽快な足取りで去って行った。


仔猫が見えなくなり、アヴィは仔猫に悪いことをしてしまったと少し罪悪感を抱いていると…


名無しさん「あの……アヴィ…」


その声にハッと我に返り名無しさんに視線を向けると、彼女はさっきよりも顔を赤らめていた。
そう言えば、手を握りしめていたままだった。


アヴィ「あっ……悪い!」

そう言って手を離そうとすると、
名無しさんの細い指が握り返し、離そうとしなかった。


アヴィ「…!?」

名無しさん「…手……嬉しい…。」

頬を染めながら微笑んで言う彼女が堪らなく可愛らしい。



アヴィ「……さっき…」

「…?」

アヴィ「さっきの…羨ましいって…」

名無しさん「あ…」



仔猫の事で遮られた会話に戻そうと切り出すと、彼女は伏し目がちに話した。




名無しさん「……その…私も…あんな風に…触って欲しいな……なんて…」


名無しさんはそのまま俯いてしまう。
よく見ればチラリと見える耳まで真っ赤になっていた。





アヴィ「……名無しさん、ちょっと来て。」

名無しさんの手を引き立ち上がる。


名無しさん「…っえ?」

驚いた表情の名無しさんを連れて、その場を足早に後にする。
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