相愛smell

5話
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貴方side








『押してダメなら、引いてみよ』








とは、つまり。




私は、轟くんのことが好きだと気づいてから
一緒の電車に乗ったり、話したり...それによって仲良くなった。






マメが言うには、これは

かなり、ぐいぐい積極的なタイプ

らしい。






世の中には少女漫画というものが出回っているけど
大抵、女子は好きな男子には恥ずかしくて積極的になれていないようで。

これに関しては、少女漫画をあまり読まない私に
ミキが熱く語ってくれた。







ミキ「女の子っていうのはね!
例えば、ボーイッシュな男気勝った子でも!

いつも友達みたいに仲良くしてた男子のことが好きだって気づいた瞬間
急に恥ずかしくて、普段とは違う態度を取っちゃうものなんだから!!

そこで、その男子もその子の態度の変化に少しずつ気づいて、それで2人はお互い好」







とりあえず、私は珍しいタイプだと分かった。















マメから必勝法を聞いてから2日経ったけど
私は実行できずにいた。



というか、轟くんから話しかけられた時の
押さない...つまり、『引く』仕方が分からない。






初めて会った日から、随分経ったけど
最近の轟くんは、私が朝、ホームに向かうと
向こうから声をかけたり、こっちに来てくれたりするようになっていた。



普通の女の子なら

「これ、脈ありっ!!」

と期待するんだろうけど、私は違う。



残念ながら、便利な個性のせいで
轟くんが私に気があるのかが、分かってしまうのだから。





私の方は、安定して良い香りが轟くんからしている。


のに。


轟くんは、そういう風には...何か香っているような発言も行動も無い。









だから、まだ......私の片思い。









この2日間。

『引く』ことも出来ず、かと言って『押す』ことも出来ず
私は、なんだか窮屈な思いで轟くんの話を聞いていた。


うまく笑えない私を見てか



轟「......風邪でも引いたのか......??」



と、本気で心配させてしまい
これ以上続けると、轟くんとの距離が離れそうだと感じた。











やっぱり、時間をかけて、もっと仲良くなろう。


普通に話した方が、お互い楽しい。










と、いつも通りに戻ろうと決心したのが、昨夜のこと。















そして、次の日の朝。














つまり、今。





私は轟くんの言葉通り、風邪を引いて
学校に行くことも出来ず、部屋のベッドで、熱にうなされていた。

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